「千田さん、分権ってできますか、本当にできるんですか」と言う人がいます。「いや、もうできていますよ。ちゃんとできて、もう既に先行して法律改正になったのもありますし、少なくとも来年の通常国会、5月、6月ごろにはすべての法律が変わりますよ。政治のやり方ももう既に変わってきていますよ」と、このように言わなければいけないのであって、今どき「地方分権なんてできるんですか」などと言っているところでないのです。そういう実態になってきています。
私は、先ほどご紹介がありましたとおり、27歳から市会議員になって12年、39歳から市長になって20年、この道30何年、私の青春、私の人生をひたすら地方自治にかけ、横手市にかけた男です。市長時代も全国市長会を通じて各所で国の法律改正、制度改正を盛んに訴えましたが、ほとんど実現しませんでした。それが今、私たちの考えたことが一挙にして徹底的に変わったのです。しかも、ただ変わっただけでなく、現実に法律改正などという制度として変わったわけです。やはり時代の流れでしょうか。そういう時なのです。今、大変革の時代ですが、それを地方自治体が見事にやっていることに改めて気が付くというか、感慨を新たにしなければいけないときではないかと思います。
しからば、今回決まり、もう既に出発進行した第1ラウンドの地方分権はどういうことか。今言ったとおり、たくさん法律改正しますから、全部話すと3日も4日もかかりますが、煎じ詰めて何だろうということになると、国と地方との関係を全く変えるということです。今までは国、つまり大蔵省とか環境庁といった省庁の中央政府、中央役人、中央官僚が上であって、私たち地方自治体が下でした。中央の主人が決めて、我々に言いつけてやらせる、こういう関係であったわけですが、それを一挙に変えて、我々と中央省庁が対等である、お互いに協力してやる、こういう関係に変わるというか、変えるのが、今回の改正の地方分権第1ラウンドの一番の趣旨というか、中身です。
具体的に言えば、これまた非常にたくさんあります。時間がないので、鳥取県でおつくりになった資料が皆様のお手元にあります。これでご説明します。「地方分権推進計画の概要」とあります(47頁参照)。そして、「I 機関委任事務制度の廃止」と書いてあります。機関委任事務制度というのは、国の勝手にできるということで、これを一切廃止して対等の立場にするということです。
次に、「新たな事務区分の制度上の取扱い」では、従来の機関委任事務が自治事務と法定受託事務に変わったと書いてあります。今まで機関委任事務のときは、我々は条例制定はできなかったのです。機関委任事務については我々が条例で決めることができない、全く国の言うとおりやるしかありませんでした。
その次に、地方議会の権限ですが、これは平成3年改正後のことで、その前は、地方議会は機関委任事務に対して何も触ることができなかったのです。私は39歳で市長になりました。若き弱々しい、つつけば倒れそうな市長でした。そして、野党が非常に多かったのです。野党議員は、質問でもって私を倒さなければいけないと猛烈勉強されて、例えば生活保護のことについても、横手市では高橋三郎に対してなぜ生活保護をやめたのか、佐藤三郎に対してなぜつけたのかという具体的な質問を議会でして、盛んに私を追及します。私はそれに対して、「皆さんの言われることももっともであるが、国の基準があって、そうは一概になかなかいかない。皆様の意もよくわかりましたから、これから大いに全力を尽くして、制度の改正や皆様の要望に前向きに善処します。」などと適当に答えるわけです。大体「前向きに善処します」などというのは絶対やる気持ちがないときに言うことでして、そう言っている間は本当はやる気はないとお見抜きいただいても結構です。本当にやるときにはおそるおそるしゃべります。