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今から30年ほど前の昭和44年、1969年になると、GNPは2位になりました。それでも私たちはまだ貧しさを感じていて、いやまだアメリカに比べたら貧しい、イギリスのあの穏やかな安定は何だ、パリのあの豊満さは何だと思い続けるのです。ですから、まさか30年も前にGNPが第2位になって、世界で2位になってお金持ちになっていたなんて、私自身改めてこれを調べて嘘じゃないこれ?と思わず言ってしまったほどです。でもそれが事実です。すでにそれから30年が経っています。ですから今30歳の人は生まれた時にはもう世界で第2位の豊かな国、お金持ちの国だったのです。「消費は美徳、使い捨て時代」が始まった昭和36年生まれの方がお母さんならば、すでにそのお子さんが中学生ぐらいになるんです。こういう時代に育った世代が次の世代を育てている時代なのです。

 

昭和45年、1970年には輸入食料は30倍にも膨れ上って、もう日本は作らなくていい、とにかく安ければ人の国のものを札束で買ってきて、それをかきこむように食べながら働けばお金が入るんだからという状況がありました。そのころに海洋汚染防止法が施行されるんです。結局そのことの本当の重大さには気が付かないんだけれど、あまりにも汚れてしまった海を汚れから守る防止法を作らなければならない状況だったんです。それから水質汚濁防止法もこの時期ですし、食器棚からホルマリンが検出されたのもこのころです。人体に有害なホルマリンが塗ってあるような食器棚を買ってきて、買ってきた輸入食料を冷蔵庫に入れて、何か食べて、さあ仕事にいけばいいという乱雑な生活スタイルがあたりまえになりました。それでももちろん見た目にはブランドものを買って、着ているものもきれい、車も乗り回してこれが中流の暮らしです。

 

それから7年後に、「1億総中流化」が始まるのです。始まったということはもうすでに始まっていたことで、それが昭和52年、1977年です。私たちが「1億総中流化」で自分は中流なんだと、悪いけど貧しい人の部類には入りたくないとみんなが思ってしまってすでに20年が経っています。ですから今20歳、ウチの息子は昭和53年生まれですが、あの子などは「1億総中流化」の中でオギャアと生まれたわけです。その子が今20歳を迎えていますので、よほど家庭での育て方とか、そういうところから始めないといけないのです。急に大人が集まって環境にいいことをしましょうと言ってもダメなのです。日本はすでに戦後の高度成長を経験し、そういう時代の中で生まれ、育ってきたお父さん、お母さんがいて、その子どもたちがもう思春期から成人を迎えようとしている。こういうことも踏まえませんと、モノは動かないんではないかと私は思います。

 

 

 

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