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それからもうひとつ私たちが動物と違ってどのくらい賛沢させてもらっているかがわかる数字もあります。

動物が1日夜明けとともに目を覚まして、自然の中にあるものを探して食べて、それで水を飲んでまたどこかねぐらで寝る。そういうふうに暮らすことをCO2に換算して、これをまず1とします。人間は朝起きて、特に何もしないで昼暮らして、夜寝るといっても、食事も生のまま食べられませんから煮炊きしますし、少しずつ余分にエネルギーを使ってしまうわけです。ですから、人間は質素にとにかく夜明けとともに起きて、なんとか煮炊きして最低限食べてどっかそのへんにして、それを土で被せてそれでまたどこかに寝る。最低限のこういう生活をやっても10なんだそうです。動物が自然に暮らすのが1として、その10倍で1人分。その上、この会場のように本来なら太陽はここにありませんから、真っ暗なはずなんですが遅々と灯りをつけ、文化的で人工的なものを作り上げながら暮らすと、これが日本人の場合25人分なんだそうです。

 

動物が1で暮らしているとしたら、日本人はその250倍というとです。動物が1匹動いて暮らす250倍を日本人一人が生きるのに使っているのです。これはまさに自然を食べ、エネルギーを作って、環境を食べて生きているということなんです。

先程アメリカの文明の木が500本といいましたが、こちらの計算だとアメリカは55人分になるそうです。だから大型で暮らしていると一人のアメリカ人が1日動くと、動物の550頭分ということです。CO2に換算すると、そのくらいのエネルギーを使っているということなんです。

 

では開発途上国ではどうかというと、中国は今まで一人が暮らすのに7人分だったんです。貧しいし、あまりエネルギーは使わず、限られた中で暮らしていたわけです。しかし近年、大変な近代化が進んで、今それが10人分になり、このままいくとすぐ15人分といわれています。

ではインドはどうでしょう。あそこはカースト制度で、大富豪は大変なお金持ちです。日本のお金持ちとは全然違うほどのお金持ちなんだそうです。階級制度では、富があると当然そのかわりに絞りとられて、どうあがいても階級からは逃れることができず、最下層といわれたら一生をそれで生きていかなくてはならない人たちがいます。その階級制のせいで、ほとんどが貧しいインドの場合は2人分なんだそうです。

ですから、私たちが生きているだけでも汚すし、食べて消費してしまいます。こういう観点から、私たちが使った分をなんとか再生しようという「リサイクル」の考え方があります。そして、使ったものをもう一度誰かが使うのが「リユース」。それからもうひとつ、引き算するように今あるものから引いていく「リリュース」、という3つ「RE」の考え方があります。これを実践していけば日本も消費が落ち着くといわれています。

しかし、そうやって森を考えようといっても、誰もがすぐに取り組むのは難しいことです。と思うのは、時代が人を作ってきたところがあるからです。急に環境問題を考えましょうとか、環境に寄与しましょうといっても、これまでの生活環境があるのです。

 

 

 

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