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そうして知ったことなのですが、スギやヒノキという木は温かい木なんだそうです。温かいというと感触も柔らかいし、実際の肌触りも柔らかい。だから冬場に暖房をガンガンやらなくても、ムクのスギとかヒノキだったら本当は温かいんですって。それが私たちはそういう知識がないものですから、折角の木を切ってきて床材とか作ってもつい、つるつるにしてくださいといってウレタン塗装してしまいます。実は、木はこれをすると冷たくなるんだそうです。しかし、木の光りや艶を出す塗料の中でも、環境問題が大変発達しているドイツ製の2種類の塗料は、塗った後に乾拭きしたり水拭きしても大丈夫で、それは木を冷たくしないんだそうです。

 

こういうことでも環境問題が先を行っているところでは、いろんな形で自分たちの身の回りに恩恵が廻ってくるようになっています。木を守ろう、森を守ろう、だから自然に帰ろう、これは短絡的すぎる話なのです。自然環境を私たちが住みやすいように、また歳をとっても過ごしていけるような厳しさと折り合いをつけながら、ある程度便利に効率よくしながらやってきた社会です。それを簡単に何年前のここに戻ればいいと、そういう問題ではないと思うんです。それはちょうど発展途上国がこれから発展しようとしているときに、先進国が炭酸ガスは出すな、火力発電はダメ、何はダメ、あれもダメ、自動車も制限しなくてはならないと言う。これもとても勝手な話で、発展途上国の人たちはみんな怒ってますよね。それは私たち欧米や日本をはじめとして先進国が使うだけ使って、それで繁栄を築いて、さあいよいよ自分たちの番だというときに、もっと原始的な生活をしてくださいというのですから。

これと同じことが、実は私たち一つの国でも今まで生きてきた世代と、これから生きる世代との間で生じているのです。

私たちが省エネしましょう、もっと自然な生活しましょう、耐乏生活しましょうと言うのは簡単です。しかし、次に来るものにしてみればやっぱりきちんとした理由があって、私たちもこうする、ここはこうだったけどこうだから、とちゃんと理論づけられなければ納得はできないでしょう。本当にあなたたちは使うだけ使って、汚すだけ汚して、ボクたち私たちに使うな、もう我慢の生活だよといって死んでいく気かと、そういわれますよ。

だから私たちは自分の人生を全うするためには、どうしたらそこのところが次の世代も納得でき、協力できるサポートシステムを作るか、環境社会の枠組みを作るかということが本当に一番大きな課題ではないかと思います。

 

 

 

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