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現在は、高気密の住宅が非常に望まれているんですが、皮肉なことに、高気密にするということは酸素も炭酸ガスも家の中に溜まってしまうということなのです。そうすると今度はどうしても電気などを使って、換気をしなければならない。動物だったら普通に呼吸しているところを、人間が家を高気密化していって、環境をよくしたいと思えば思うほどエネルギーを使うことになるのです。暑さ寒さも太陽や自然の風が入ってきて、それにある程度人間が対応していくという暮らしを変え、わざわざ窓を閉めたままで換気をして温度環境を整えようとします。そうすると太陽も風も入ってこなくなり、そういう中でますます暖房や冷房が必要になります。こうした形で現在の住宅は、エネルギーを使う方向に向かってきたのです。

ここにきて私たちが何か変だ、家の中にいて不健康になるのはおかしいと感じるようになってきました。

この会場も見回していただくとわかるんですが、木に覆われています。木は音の吸収と反響にとてもいいんですって。ですからビンビンと音が響いています。私たちの耳には直接分からなくても、木が反響と残響をほどよく響かせ、吸収しているからなんです。私たちの家の中でもこういう環境がいいわけなんですね。

 

そこで、何か変だと言われ始めたのはこんなことです。

最近、健康住宅という言葉が出てきました。それも本当に木のムク材で壁があり、土壁もちゃんとあって、塗り壁になっていれば音も吸収してくれるから、適当に弾力性もあって、呼吸もできる家のはずなんです。しかし、そういう家であっても、そこに一時期流行ったようにビニールクロスで壁を覆ってしまいますと、結局は壁が汗をかくことになってしまいます。

人間がそこにいるだけで蒸気熱というか水蒸気が相当発散しているはずです。木だとある程度それを吸収して、乾燥してきたら出して、という作用をやってくれているんですが、ビニールクロスだと一切それがなくて、多くの家族が呼吸をして、しかも暖房があったり、冷房があったりで壁や窓が結露して、気がついたら自分の体の具合が悪いとかいうことになってしまう。今、特に接着剤が問題視され、ノンホルムとか低ホルム系になったんですがそれまでは壁紙からこういった接着剤の成分が発散していて、目はチカチカ、頭痛がするとか。結局家の中も、人工的にやればやるほど不健康な状況を作ってきたという歴史があるんです。それで今はほとんど、工務店とかが勉強しはじめてノンホルム、低ホルムの接着剤や壁紙にしてなるべく人の体にいいようにしましょうという動きになっています。

それから、部屋の半分が木で覆われていたら、他が人工的なもので覆われていても部屋の湿度60%に保つということがわかっています。だからできたら木のムクが部屋のどこかに貼られているといいんだそうです。天井とか、床とか。

私たちは命ある木を切って使わせてもらっているのですから、本来は私たちはもっと情報を手にする必要があるのです。ただ一方的に森を守りましょうというだけでなく、木を使うことによって回転していく林業もまた私たちの生活のひとつです。本当にもっと私たちが知らなければならない木に関する情報がたくさんあるんです。でも、なかなかそれに接点がなくて、私なども一生懸命いろんな方に会って、情報を仕入れ勉強しているんですが、ひとつひとつ聞くたびに、もっと早く知っていればよかったということが往々にしてあります。

 

 

 

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