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私は、日本建築を勉強しています。つくづく昔の建築というのは素晴しいものだと思って、機会があるごとに訪ねて写真を撮って、どのようにできているのかを調べています。中でも、上がり框を専門に、ライフワークとして研究していこうと思っているんです。日本人の暮らしぶり、暮らしの文化、それは履物を脱いで、上がっていくというのが、いつかできあがった形なんです。日本家屋の入口には上がり框という横架材が1本入りまして、さあここからが中ですよ、履物を脱いでくださいという結界を作っているのです。

こうした上がり框はいつ発生したのか、なぜここに入るのか研究していますと、やはりそこに踏む力が加わるからあった方がいいという力学的な解説もありますが、やはり美学の問題もあって、そこにきれいに框がはいると玄関が締まってくるわけです。木と日本人の暮らしっていうのも、切っても切れないものがあるんですね。

どれだけ日本人の暮らしが洋風化してきても、やはり全く木のないところで生活ができないという日本人はやはり多いのです。できれば心のどこかで、家の中にムク材が入っていて欲しいと思っているのです。ムク材を使って、見た目にもグレードもアップして、心の苛立ちも抑えてくれるような部屋を作りたいと思うんですね。それは家を建てる方が具体的な環境度のデータをとったわけではないのに、木を使うとどれだけ自分が心地いいかということを体で感じて知っているからなんです。

木造建築でよく、法隆寺などがあれほどもつのは、木が呼吸をしているからだといわれます。私たちの体が呼吸をしているように、木も呼吸しているのです。そんな木のある暮らしをしたいと思いながらも、今の住宅はどんどん密閉化に向かっています。

 

木のないところで生活ができないという日本人

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