日本の子どもたちがお絵描きをして、画用紙をちょっと失敗しても安いからまあいいかと、またもう1枚ということで使ってしまいますが、調べたら画用紙1枚を日本中の子がもう1枚と使うと、森に住むオランウータンが1頭飢えるんですって。そういうふうなめぐりあわせになっているんです。つまりはオランウータンが食べる木の葉っぱ、木を切ってパルプを作って、紙になるのですから、結局安いからいいじゃないかともう1枚、この子が画家になるかもしれないともう1枚、そういう気持ちが、ひいてはオランウータンが飢える、ちょっとひもじいなと思う状況になる、という関係を生んでいるわけです。
例えば、1トンの紙を作るのに、直径16cm、高さ8mの木が20本要るという計算があるのです。だから、お手洗いでも少し考えてトイレットペーパーなども気をつけようというのは、全てが森につながっていくということがいえると思うんです。
水の問題でもとっても森が重要で「魚付き林」(うおつきりん)という言葉があります。カキの養殖をされている方がどうしてもカキの味が悪くなって、ご自分で何かおかしいと調べたら結局水が悪いということがわかったのです。海といっても、カキは陸の近くに住みますからこの水べりが悪いわけです。どうしたらいいのかと考えて、ずっと遠くを見てあの山に木を植えて、水をきれいにしなくてはと気付かれたそうです。そこで、漁師さんが組合で山に木を植えたんです。その結果、大きなカキが再び獲れるようになりました。ここのカキはぶるんぶるんしていて、獲ったまますぐ食べられるんですって。それで今も漁師さんたちが木を植え続けているんです。
結局、木が植えられることによって山が豊かになって、そうすると伏流水がずっと保たれる。これは濾されていく浄水器と同じで、少しずつきれいになった水が海に流れていくようになります。カキの養殖ということで自分たちは仕事のために海を汚す、水を汚す。しかし汚れると自分たちも貧しくなるということで、結局木を植え山を守ることに気付き、それが今成功しているんですね。こういった例もありますように、いろんなところで木とのつながりがあると思います。
このように人間が森の住人から都市の住人に移ってしまって久しいわけですが、森の住人であった頃との一番の違いは先程もお話ししましたようにエネルギーを使うことです。人間はエネルギーを作ることを覚え、使うことを覚え、それによってさらに石油化学製品を作り、というふうにどんどん発展してきました。またこうした発展はそのまま、森を遠くしてしまいましたし、逆に私たちは物に囲まれれば、囲まれるほど大変な苛立ちを覚えるようになってしまいました。