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映画上映

 

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1987年 アカデミー賞受賞

監督・脚本・原画/フレデリック・バック

製作総指揮/フーバー・ティソン

音楽/ノーマン・ロジェ

 

EXPLANATION

人が地球上に生命を得て、人類がみな幸せに生きていくには何をすればよいか。この映画は、生命の喜びを共に享受できる自然環境を守り、荒野から長年にわたる努力により緑滴る森林をつくりあげた一人の男の物語である。南フランスの砂漠化した荒野にたった三軒程の家が風に吹きさらされて残骸のように建っている。
第一次大戦中のある風の強い日、一人の青年がこの荒野の地を訪れた。吹きすさぶ嵐で目の前が見えにくい日だった。遥かに遠い砂丘に何か一本の木が立っているように見えたが、近づくとそれは初老の羊飼いで、この男からやっとの思いで少しの水をわけてもらい、それが縁で一夜を羊飼いの男の家で過ごすことになる。羊飼いは老人のように見えたが実は50才で、先年、妻を亡くし子供を死なせたという身の上話を聞かされた。名前をエルゼアール・ブッフィェといった。何もすることのない羊飼いの生き甲斐は、毎日毎日、カシワの木の種子であるどんぐりを100個ずつ水につけ、翌日荒野に穴をあけ埋めていくことで、それが唯一の楽しみであり、日課だという。老人は飢えに苦しむ村人、現金収入もない貧しい暮らしから生じる人と人とのいがみ合い、水も無い地獄のような生活の中で、豊かな自然を取り戻したい遠大な情熱を持ち続けていた。

その後、青年はフランス国家の兵卒として参戦し、戦地を転々とした。そして人間同志の憎しみ合う状況を見せつけられる。やがてフランスは戦勝国となり、国をあげて歓声の中で人々は平和を喜び、青年も軍隊から解放された。ただ一人になって人生をどのように生きればよいのか考える時、彼はとまどった。ふと青年は、あのエルゼアール・ブッフィェ老人を思い出した。

自分の信じる道をひたすら歩き続ける意志の強い老人の生き方に青年の深い感動を覚え、再び老人を尋ねる。昔とかわらない砂丘を登っていくと、頂上にたどり着く頃、何か目に明るいものを感じた。それは砂丘の向こう側に見える、まるでじゅうたんを敷きつめたような緑一色の世界であった。青年は驚いた。かつての水も草も、木も無い乾燥した砂漠の地に、大自然からの恵みを享受する人々の姿があり、20数年前には想像もしなかった緑の森林への大変貌であった。青年はエルゼアール老人を探し求めた…。貧しい羊飼いの20数年の努力は自分のためだけでなく、次の世代の多くの人々に幸福をもたらす結果が得られたのである。

 

 

 

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