(ホールの音はホールスタッフが一番知っている)
ホールのスタッフの方は案外自分のホールのシステムについて知らないという方が多いですね。
それはいろんなことに自分で使ってないんじゃないのかな、という想像をしたんです。自分のホールの施設をいろんな角度から使いこなしてその作品あるいは催し物に出会って使いこなしていく、それには時間がかかると思います。
我々外部スタッフの人間は「客が入ったときの音の変化」や「フラッターの出具合」などを聞きたいんです。そのことをデータにして今日の作品をこうしようと思うわけですから。なかなか難しいのかなあと思います。
(設備改善の提言者として)
ぜひこれは行政のしかるべき人にお話願いたいと思います。設備というのは固定的であったら困るわけです。どうも建物というと一度作ってしまうと何となくそれで絶対化されちゃうというきらいがあり、文化施設ですから、文化というのは動いています。固定的じゃない、で、設備が固定的でいいかというとそれはないわけです。
だから始まった当初はこんな催しが多かった。でも、だんだん市民の人が持ち込む催しはこういうものが多くなった。だからこういう施設が必要になってきたということは当然あるわけで、そのためにはどういうものがこれから必要か、どこを改善するべきかということを一番知っているのは現場スタッフじゃないかと思います。
行政の方はそういう現場の意見をよくつぶさに聞いてどんどん作り替えていってほしいなあと思います。
○舞台文化と音響
(舞台文化と他の分野との違い)
舞台というのは音響の立場から見てどういう特徴があるかというと、実はこれは専門学校で一番最初に講義する内容なんですが、いまさらで何ですけど、放送とか録音とかと舞台との違いは何かというと、同時性、同所性ということです。
「一緒に呼吸をして、同じ場所で同次元で進行している」これが舞台です。とっても単純なことですけど、そのことが何を生み出しているかをぜひ考えていただきたい。
(生とは何か)
それはその次に書いてあるように、生の舞台文化というものの最大の特徴で最大の効能といいますか、私が皆さんに何かいう、それに対していろんなことを思う、その往復があって見ず知らずの皆さんと私と人間関係が出来ていくわけです。
で、舞台のおもしろさというのはそこなんだというのが定説です。が、もうひとつ大事だなと思っているのは実はここに立っている私とあなたの関係だけじゃないんです、できるのは。実はそこに座っている隣どうしの関係ができる。私は切り離して。これが舞台文化の大事なポイントだと思っています。それをどうやって広げてどうやって根付かせていくかというのは、舞台のスタッフとそういうことを意識的に作ろうという人たちとの協力関係がなかったら出来ないと思うんです。
そのことをぜひ頭に置いておいていただきたいと思います。
(電気音響と生音)
我々が音響という仕事をするとき、ほとんどの場合電気音響というのを介在して仕事をします。しかし、音響の仕事というのは必ずしも電気音響ではありません。