3 舞台美術プラン作業過程
(1) プランニング・調査
時間的な流れといいますか、説明すると、だいたい公演日の1年から2年前くらいに話があります。で規模が大きい場合ですと道具の分量も多いですけどプランニングする時間、あと調査する時間、歴史的なものを行う場合その地域に行って調べものなんかをするわけです。でそういうことによって、時間的に下調べというのが終わって、1回目を1年前くらいに行います。調査を、現場に入って写真を撮ったりします。図面だけじゃ分からないんですね。どこでやるのか野外なのか劇場なのか、寸法だけじゃわからない。劇場の下見も必ずいります。私は劇場の写真を撮って、模型を作りますので、それをもとに劇場からもらった図面とともに劇場模型を作ります。場所というものをもとに作り上げるもんだというのが私の考え方です。
(2) ラフプラン
先ず1回目にラフプラン、これは絵ですね、絵を出します。それから大まかな平面図、あと劇場模型で、このときはまだ中身の模型は作っていないんですよ。それをもとに1回目の打ち合わせをします。もちろんこの場合は演出家から制限を与えられない場合ですね。与えられる場合は逆に演出家に前に会って演出家の意図を完全に聞かなきゃダメですから。本だけの世界でこっちに私がどう考えるのか求める人は、こういう形を取ります。ですから演出家によって順番、この流れ方は違いますけど、この作業をやりまして、これが早いときで2回から4回やります。こういうのをぼんぼんと1月くらいおきにやっていきます。その中で何回か行われたときに白模型を中身、いわゆるセットの白模型もそれに追加されるわけです。で、セットの白模型ともちろん絵も変わっていきます。
で、これで演出家なり他のスタッフなりと協議します。セットと照明というのはそういうなかでコミュニケーションをとらないといけません。
(3) 色模型作成
ここの段階でゴーが出る、そこで本格的な図面、図面の発注作業のきちんとしたものを作ります。これをもとに色模型を作るわけです。ここの段階で白模型から色模型、単純にセットというのはまっ平らじゃなく凹凸がありますからマチエール、色とか。最近はいろんな素材がありますのでどういう感じになるのか具体的に色つきでスケールが30分の1で作ります。このくらいのホールだと30分の1。もっと大きくなると巨大になりますから、50分の1にします。50だと発注の時に制作側に伝わりにくいので別に見本を作ります。ある部分の模型を10分の1で作ります。それがどういう質感であるか分かる部分模型を作ります。
(4) 発注
発注になりますが、よくある1週間から2週間公演でキャパが4〜500名の劇場ですと、2週間から3週間で工場では出来てしまいます。アルミとかアクリルとかだと時間がかかりますが、普通はこのくらいでできます。仕込み日の2・3日前に工場チェックがあります。これを抜かしちゃうといくら図面など出してても違うところがあるんですね。まあなんでそんな細かいことと言われちゃうんですが、日本の場合仕込み日が短いと言いましたけど、その中では直す時間がほとんどありません。だから時間が無いために思うようなものができなくて公演しなくちゃいけない。それを防ぐためにこの工場チェックというのはすごく大事です。
模型と図面を出していますので大きなミス、とんでもないことにはならないんですね。私が模型でやるのは何故かというと、絵と図面でやると表面のところがぜんぜん違ってくるんですね。そういうずれを起こさないためにこういうチェックをやっています。仕込みの間も出来る限り直しの時間を舞台監督にとってもらうんですけどなかなか取れません。直しというのも朝1時間とか最後の1時間とかちよっとしかない。叩きものだったらそんな変化はないんですが最近いろんな材料がありますので。
発注の時に、営業の人に加えて、普通の営業と違って大道具の会社の営業というのはものすごく詳しくてよく知っているのだけど、ものによっては、背景屋さんとか経師屋さんとか鉄骨屋さんとか、いろんな人たち、大工さんもそうですが、が入ってくるわけですね。