講義・研修
「舞台デザインを考える」
舞台美術家 島 次郎
【講義の概要】
今日お話しようと思っているのは、舞台美術の話ですが、こういう劇場だけじゃなくてちっちゃなアトリエとか大きいとことかいろんなとこでやってんのを、スライドがありますのでそのスライドを元にこんなことがあったんだよとかをお話ししていきたいと思います。
1 舞台美術の現状
舞台美術というのは誰でも出来るわけで、私も舞台美術を専門的に教育されたわけじゃなくて自己流でずっとやってきているわけですが、またやり始めてからもそんなに経っていません。十何年ですので、そんなプロじゃないです。逆いうと舞台美術はいろんな人の協力で作り上げるわけです。だから昔は舞台監督なり舞台スタッフ、制作、劇団やカンパニーが一緒に作ってきたわけです。しかし制作場所の確保の困難さがあって、今は製作会社に依頼して作ってもらっています。
今日お見せするスライドのなかには、最初の頃は自分たちで、劇団員が作ったものもけっこうあると思います。しかし最近は制作場所の関係で小さなカンパニーでも制作工場に外注して作ってもらうというやり方が大半です。
舞台美術はその人その人で違いまして、正しいやり方というのはないんです。個人個人で作り上げるんですね。どういうふうに立ち上げていくか、図面なり模型なり、昔は絵とおおまかな図面でやったんですけど、最近は劇場では空間をどうしていくかというふうにだいぶ変わってきたので、模型を出す場合が多いですね。模型のほうが空間が演出家なり照明家なり俳優に分かりやすいので主流になってきた。昔は舞台美術家というのは、いませんで大工と絵描きで作り上げた空間なので、それがここ何十年かでだいぶ変わってきまして、最近は空間でもってそこでどう作り上げていくか、どう構成していくかというふうになってきています。
最近、舞台美術家も建築家、彫刻家、絵本作家とかいろんな方がやり始めました。これは現場自体を活性化させていくためには、すごくいいと思います。舞台美術家というのをいろんな人間がやることによって作られるものが広がるんですね。確かに舞台のスタッフ、舞台美術というのは今でも尺貫法でして、大道具さんなんかも尺貫法で出しています。そんな事になりますとファインアートの人とか建築、彫刻家の人はその辺ちよっと苦手なもんですからその空間のなかでどういうふうになるのかそのプランナーの意向をくみ取ってですね、どういうふうになるのか、具現的作業がはいってきます。表現行為プラス具体的な作業というのが入ってきますので、そこでそういう舞台のスタッフの人が技術監督とかそういう立場でファインアートなんかやってらっしゃる方の助手というか補助の形でそういう方と一緒にやってもらえばこの世界も新しい展開になっていくんではと思っています。
2 舞台美術の要件(空間・時間・予算)
私が手掛けているのは、演劇がほとんどです。たまにグランドオペラを。だいたいそういうものをやっていまして、デザインをしていって具体的にそれを立ち上げていくわけなんですけど、よくあるのが、台本が既成台本だったら問題ないんですが、舞台空間を作るには時間と空間と予算(お金)だよというんですけども、新作の場合どうしても本が遅くなることがあります。
これがありますと舞台やっている人間からするとすごく困ります。公演日は決まっているわけですから、時間がなくなる。特に新作の場合は、作家にもう少し強く言っていかなければ現場自体がやりたいと思ったものができないんじゃないかと感じます。時間がないということはいろんなとこにひずみがきます。デザインを考える上でも最初本を読んだ時点でイメージして、起こしたものは全体の3分の1でしかないんですよね。