「調光システムの現状と今後の動向について」
東芝ライテック(株)
システム事業部システム技術部システム設計 山口 拓
【講義の概要】
1. メモリ調光操作卓について
歴史的な物から現状そして将来的な物まで話したいと思います。1960年代にアメリカでサイリスターというのが半導体素子ですが実用段階になって多段プリセット卓と合わさって使われたことが半導体素子が使われた最初ということになるようです。コンピューターは最初パンチカードリーダーを最初使っていた。照明の世界でもパンチカードリーダーで照明のデータを入れていったものです。
メトロポリタン劇場があるリンカーンセンターの小さな劇場で、ビビアンバーモント劇場という所で使われていた。これが最初だ。それから、69年に東京の普門館では、磁気ドラムを使用した卓が採用されていた。世の中は、トランジスタ・IC・LSI・VLSIなんかで非常に集積度が上がってきておりまして、今は倍々ゲームでずっと来てそろそろ集積度は一杯ではないかと言われながらもまだ発展していますが、それらの発展に伴って照明の業界もコンピューター化がなされてきている。
海外の照明業界では1970年代にコンピューター化が盛んだった。日本の場合は70年後半で始まった。ただし、日本はNHKホールでミニコンを入れております。これは、初期のミニコンだったということもあって多少トラブルがでたようですが、これが日本の1号機ではないかと言われています。
コンピューター支援調光卓という名前が正解かどうかわかりませんが、コンピューターを使って複雑なソフトが動いてくるような物を言っている。これは、1980年代にストランドのライトパレットというのが日本に入ってきまして、新宿のシアターアップルに入って色々な話題をさらっていった調光卓です。後ほど、写真を見ながら特徴を紹介したいと思います。
歴史的にはこのような物がありまして、あとは日本にその後色んな調光卓が入って扱われて普及してきております。
メモリー操作卓が必要になった背景は、省力化と投資というあまり言葉は良くないが、あまり人の手を掛けずにという経営的な面が一点。正確に再現ができるということで、例えばレパートリー上演、それが何回か行われる場合や、ロングランで上演される場合に忠実に再現できるので非常に便利だということです。それから、照明デザインが非常に複雑になってきたということで、それを手動だけで操作しようとすると限界がある。色んな機能をコンピューターで行えるようにという要求が出てきたということです。それから、逆にそういう風にできるようになってきたが故に、照明デザイナーが更に複雑な照明デザインを作れるようになってきた。
コンピューターを使うことによって長時間のフェードが実現できるようになってきた。例えば、10分間ホリゾントにフェードをかけるということまでできるようになった。
現状のメモリー操作卓の区分ですが、大きく3つに分かれます。一つ目は、大きく二つに分けて時間軸制御をしないものとする物。この2点に分かれる。最初の時間軸制御をしないというほうが、クロスフェーダを使用した物です。もう一つはサブマスターを中心とした音楽とかコンサートが中心になる操作卓、よく持ち込みで使われる操作卓です。
時間軸制御をする、本日の主テーマですがこのコンピューター支援調光卓。これは主にムーブフェードという形で再生をされています。ムーブフェードは変化するものだけのデータを入れていく、変化するものだけが変わっていく、一言で言えばそういうものだ。クロスフェードの時みたいに全チャンネルを合わせる必要は無い。
ノンフェーダー調光卓と言う表現をしましたが、このムーブフェードを行うような調光卓の場合にはノンフェーダで動かすことができます。