1階の奥というのは直接音が入ってこない、入ったとしても天井からの反射音が2階席に蹴られて入ってこない席が多いホールを作ってるんですね。そのかわり2階席も非常に舞台に近くなってて見やすい、一体感がある。1階席の弱い部分に対してはどうせPAを使うわけですからディレイをかけるなんなりすればずいぶん音響的にもできるということでかなりこれまでにつくられてる公共ホールとは全く違うタイプの劇場をつくって来てます。
舞台等設備についてもこれからまた照明の話を伺うことになりますけど、照明にしても音響にしてもどんどん新しい技術が出てきてると思います。特にアナログからデジタルに変わったと言うことで色々な格段の進歩が有ったかと思いますが、舞台機構についても昔はロープを手で引っ張っていたのが今は全部コンピュータになってきてるかと思います。
びわ湖ホールでですね、オープニングガラをやったときに問題になりましたのが要は全部舞台機構もコンピュータ制御ですからメモリーしなきゃならないんですよ。ロープをあげるのはすぐできますけれどもコンピュータってことは打ち込まなきゃ動かないわけですよね。だからそのための待ち時間というのが従来の仕込みよりも遥かに長い。照明もそうでしょう。デジタルになってレベルで打ち込んで行かなきゃならないからそのための打ち込み時間で待ち時間が長くなってるのですけど、それと同様に舞台機構の待ち時間が結構増えちゃうんですよ。演出家って大体わがままですから自分のせいで遅れるのは全然いいんですけど、人のせいで遅れるとものすごく怒りますよね。いうことで仕込み時間がものすごく長くなったんですね。
それで非常に巨匠である人達が怒り出しちゃってえらいさわぎになりましたけど、館のスタッフも慣れてない、初めての使用ですからそう簡単に対応できなかったという問題点があるんですけど最新の技術を導入したからすぐ格段に良くなるかというと絶対にそんなことはないですよね。やはりそこにいる館のスタッフが熟知するまでの時間というのが必要なんですね。従来のホールが竣工して引き渡しを受けて3ヶ月で幕が開けられたとすれば今は半年やってもあぶないって感じですよね。その半年間もただ中でいじるだけじゃなくてテストコンサートをやってみるとか色々なことをやって勉強を積んでからじゃないととてもとてもお金を取って館を貸せるような状況にはならない。それがどうも誤解されていて最新の設備を入れるとすぐ使えると思いがちなところがあるように思うんですけども非常にそのへんが問題になってきてると思います。
そのあたりの教育とかと言うことが非常に重要で、実は僕が皆さんにお聞きしたいなと思ったんですけど、そういうことに対してみなさんどういう風にしてるのかなと思うんですね。例えば、照明だと日本照明家協会から機関誌を出してますよね。舞台監督協会もそういう機関誌があったり、そういうのって皆さん定期的に購読して読んでいらっしゃるんでしょうか。何らかの劇場技術の雑誌を読んでますよと言う方どのくらいいらっしゃいます。失礼ですけど、これしかいないのかよと言うくらいしかいませんよね。
それから今日なんか皆さんいらっしゃってるからすごくすばらしいことだと思うんですけども、こういう会にどれだけ積極的に出てるのかな。ステージラボも2人ぐらいしか手が上がらなかったですけれどもね。館の方も忙しいから大事なスタッフを休ませて、お金まで払って行かせるのは大変だということもあるのかも知れませんが、そういう勉強をしてもらわなければそりゃ絶対無理ですよね。僕ら作る側としては新しくてこんなにいいものを作ってるんですよと思ってるんですけど、実際に新しい物が出来たらそれなりの勉強をしてもらわないと絶対に有効に生かせないということがあると思うんですよね。で、文化庁なんかも国内研修なんかも有ると思うんですよね。海外研修、そういう制度もありますよね。
公共ホールのスタッフでも行かれた方いますよね。館長さんに言わなければいけないのかと思いますけど、ぜひそういう場をどんどん作ってもらって技術者を養成するということをやってもらわないと絶対生かせないというのが私の思いなんですね。それ以前の問題もあるのかも知れません。ホールスタッフの中で技術職が誰もいない、この中で技術職の方どのくらいいらっしゃいますか。その方々、もともとそのホールの技術を勉強なさっていた方ですか。たまたま、高校で電気科を出たからとか、そりゃ無理ですよね。
要は電気のつなぎ方を知っていても舞台照明はどのようなのがいいのかとか音響はどういうのがいいのかとかというのはただ電気の知識があるだけではこなせないわけでもちろん一生懸命努力して学んでいらっしゃる方もいるかと思いますけど、そういう場をもっともっとセットしていかない限りは良くなりっこないと私は思ってますけどもいかがでしょうか。ということで技術については格段の進歩してると思いますが、実際にそれがうまくいっているのかという点では不安だなと思います。