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黒部の例ばかりで申し訳ないんですけど、作るときにホールの数を減らしました。そのかわり誰でも自由に来られるスペースを増やしました。かつ、運営にお願いしまして鍵はかけないでくれと、ですからほとんどの施設、鍵がかかっていません。自由に入り込んでいいわけですね。それからホテルのラウンジ的な空間、これはみなさんもよく経験していると思いますがちょっと待ち合わせをするときホテルのラウンジを使ったりしますよね。これはお金を払わなくてもいられる場所ですよね。割と雰囲気が良くてと言うようなスペースが用意されています。僕は説明の中で学生食堂のような空間を作りましょうと言ってます。

みなさんも大学時代、休講になるとあつまるたまり場って有ったんだと思いますね。僕の場合それは学生食堂なんですけれど、そこにいくと仲間がいる。4人集まれば雀荘に行く。同好会の連絡ノートですとか、色々なポスターが貼ってあって最大の情報センターになってたと思うんですけど、ああいうスペースが劇場にって非常に必要なスペースじゃないかと、つまりきれいに使わなければならないというのは人を寄せ付けなくなっちゃいますし、お金を払わなければならないというのも人を拒絶することになります。有る程度汚してもいいし、自由に使ってもらっていいよというスペースを持つことがやはり人を集めることになるんじゃないかなと思っています。

世田谷パブリックシアターというのが出来ましたけれども、これも名前から言ってパブリックシアター、パブリックって付けたのは初めてだと思うんですけれど、要は人に集まってほしいという意味なんですよね。そこの佐藤信さんという演出家の人が構想段階からずっとはいっておられましたけれども、佐藤信さんは日本の劇場にお客さんはいないと言う認識なんですよね。観客はいないんだというところから発想しようということなんです。ですから1人でも多くの人たちに興味を持ってもらうところから入ろうということで舞台の上にカラオケセットをおいておこう。昼間、劇場が使われていない時は誰でも来てそこで歌っていいよと言うぐらいのところからやっていかないとだめだとお考えになったんですね。実際には利用率が高くてそんなカラオケをやっている時間なんてないですから現状はそうはなってませんけど、精神としてはそういうところから入っています。

そういうような文化会館を作ると言うときにまず従来で言えば席数はいくつなのか、音楽なのか演劇なのかというところから構想を積み上げていってたと思うんですけれども、むしろそうではなくてホール以外の部分ってどうやって人を引きつける魅力的な部分を用意できるのかということを考えていくことが重要になってきてると思います。

それから舞台ですけれども、むしろみなさんはこちらの方がご専門かと思いますけど、先程ちょっとお話しした新国立劇場以来、多面舞台っていう言い方をしてるんですね。多面舞台劇場連絡協議会という組織がありまして、新国立劇場のプロダクションを受け入れようということで浜松とか愛知、三重、びわ湖ホール、兵庫県とか幾つかの大型の舞台を持ったホールが横の連絡組織を作っています。かなり立派な舞台機構を持っていますから、舞台転換が容易にできるということで新国立劇場で作る大型のプロダクションを受け皿にしようということですよね。それからどうしても多目的に対応しようとか演出の自由度を確保しようとかと言う意味で可変型の機構がたくさん入ってきてるかと思いますね。

僕らも舞台機構設備と呼んでいるのですけれどその中に要は舞台機構以外の物ってすごく増えてるんですね。例えば、客席の残響可変装置ですとか、持ち込みスピーカ用の吊り物の設備ですとかシーリングの開口部分を塞ぐ機構ですとか色々と可変機構をもうけるところが増えてきています。持ち込みスピーカ用の吊り物機構なんて持ち込んでるスピーカよりもはるかに高いですよね。数百万かかるわけですよね。シーリングの開口を蓋したからといってどれだけ音が変わるのか音響の専門家から言ったら確かに変わるのかも知れませんが、それが本当に耳でわかるのかそれがいったい何人いるのかと言う気がするんですがどんどんそういう傾向があって本当に我々、劇場コンサルタントが情けないところも有るんですが、たいてい音響コンサルタントに負けます。彼らはですね、物理学なんですよ。

残響時間にしても直接音に対する反射音がどうゆう風にどこからどれだけの強さがくるとかというものをちゃんと計算して出してきますからなかなか対抗できずに負けることが多いんですけども日本のホールってのはまず音響を重視してるという傾向が強いですよね。浅利さんも機関誌の中に書いてましたけど、まあそういう傾向に一石を投じるという意味で今、四季が作っている小屋というのは2階席がものすごくオーバーハングしている。

 

 

 

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