ということで公立ホールの変遷のところなんですが、最近は僕がお話ししたような活動とか授業というのは少しずつ色んなところで芽生えてきていると思います。
2つ目のところは技術的な話というか建築的な話なんですけれども公共ホールの新しい動きということで施設面の話をまず書かせていただいています。
文化会館というのが美術館とか図書館なんかとは少しわけが違って、やはり立地条件ってすごく大きな問題だと思うんですが、一番いい立地というのは人がいっぱい集まるところ。もともと建築基準法的にいえば用途が商業地域または準工業地域以外に立ててはいけないんですね。なかなか行政、土地が得られないんで住居地域とかに建てているところもありますが、本来、商業地域、ひとが一番集まる地域に建てるべき施設であろうと思います。ですから、駅前の再開発ですとか中央都市は中央の空洞化ということが問題になっていますが、むしろそういうところの人の一番集まりやすいところに建てる。又、周辺には商業施設、飲食なりショッピング関係がある様なところの方が望ましいと思うんですけれども、そういう傾向の中から最近では単体で建てるのではなくて複合化していくということが非常に多くなってきていると思います。
新国立劇場も最初は単独で考えていたんですけど隣の地権者と話し合いをしまして東京オペラシテイという高層のオフィスビルが出来ていますね。あれは新国立劇場の空中権と呼んでいるんですが、建坪率ってご存じでしょう。それに対して建てる施設のボリュームが小さいですから本来、もっと建てられるんですね。その権利を民間に売ったわけですね。そうするとその分のお金が入ってくるわけですから国としても非常に儲かったわけですけれどもそういった関連する施設、芸団協ですとか、舞台芸術の団体が民間の方に入っていたとか、コンサートホールも民間の方で作ってもらったり、美術館ができたりと民間が作ってくれたわけです。
それから僕らがやったので行くと、浜松アクトシティみたいなものですね。あれも浜松の駅前の開発ですけれど、ホテルあり色々な施設が一緒になっていますよね。と言うことで成立している。つまり従来であればこういう文化会館というのは教育施設でお芝居が見れればいい、コンサートが聴ければいいという風なところだったと思うんですけど、そうじゃなくてもっと娯楽施設ですよね。民間のホールってまさにそうですから、そうすると観劇している時間帯だけじゃなくてその前の楽しみ後の楽しみということが一体となっていなければならないし、そうだと思うんですけどそういう開発がかなり増えてきてると思います。
それから一つの会館の中に複数のホールをもっということも増えてきてると思うんですね。僕がやったやつの中では4つ入っているのが一番多いでしょうか。彩の目さいたま芸術劇場、大、中、小、映像の4つですし、東京芸術劇場もコンサートホールがあって演劇用があって小ホールが2つある。そういう複数のホールを一つの会館の中に建てるという傾向も出てきていると思います。となると従来で有れば大きさで分けて大ホール、中ホール、小ホールと呼んでいたのがもうちょっと機能分担をはかっていってさっきの例で言えば熊本のように大ホールと呼ばずにコンサートホールと呼ぼうとか中ホールと呼ばないで演劇劇場と呼んだりですねというようなかなり演目ごとの特化したホールができるようになってきた。
それと同時にホール以外の部門が充実してきているということも言えるんですね。要は公演というのはさっき申し上げましたように大した数が入らないとなると劇場といってもずっと死んだような状態でいるわけですよね。昼間、舞台で仕込みをしていてもそれは外からはなにも見えないわけですよね。そうすると一般の市民にとって劇場がなにをやっているかということが見えてこない。それから建築家が魅力的なパースを書いていてですね、ホワイエに着飾った人たちがいて、ロングドレスを着た人たちがワイングラスをもったりシャンパングラスをもったりする絵を書きますけどそんなことが現実に起こっているんだろうかと考えるとほとんど起こっていないだろうし、起こったとしても年に何回しかないとなるとほとんど眠ったままの状態になっているんですね。それじゃいけないよと言うんでホール以外の日常的に人が集まれる施設を作ろうという傾向が強くなっているかと思います。具体的に言うと舞台芸術をやっている方々に対しては練習室とかリハーサル室、一般の人たちに対しては情報センターですとか総合インフォメーション的なもので情報を提供していこうという部分を作っていくんですね。