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ですから最近ぼくの会社がつくるものは主目的ホールはやめましょう、時代に逆行するようですが多目的ホールでいいじゃないですかと、東京なり大阪なり他のホールとネットワークが組めるところは別ですけれども地方の都市でそういった機能分担がはかれないところについてはもう多目的でいいじゃないかということを申し上げています。いろいろな技術開発が進んできていますから残響時間のコントロールも自由ですし、舞台機構にしましてもかなり新しい物を導入することによって対応の幅がどんどん広がってきている。またレベルも上がってきていますのでもう多目的ホールを作ろうというのが最近のぼくの考えです。

それでそこらへんまでが第二世代だとするとどうも忘れられている人たちがいるんじゃないですかというのが私の一番の関心時なんですよね。それが第三世代と呼んでいるやつですけれどもお客様は神様ですと言った演歌の歌手がいましたけれど、まさにそうなんでお客様を抜きにして語れないのではないかというのが今の私の一番の関心事なんですね。劇場を建てる側の行政の方にとってはひとつの記念碑的な物であったりとかそういう意味のものであったりとかで価値がありますし実際上演する側からしてもりっぱなホールが出来れば上演する場が与えられるわけですからいいんですけれども観客にとって本当にそのホールが機能しているのかなということが気になっています。先ほどのビデオの中でも稼働率が20%、あれは嘘でも何でもなくて黒部のホールを作るときに富山県のホールを調べたんですけど本当に利用されていないんですよね。ですから20%ということは5分の1ですから週に1.5回ぐらいですか、週休5日制ですよね。

そうなると管理のスタッフもおくのはもったいないから役場の人たちが5時までの勤務が済んでからちょっと向こうへ行って面倒を見るとかそういう程度で常駐スタッフも本当に少ない3人とか4人とかましてや技術者なんか誰もいないというホールが多かったんですね。でも、建物を造るのはちょっとした建物でも10億なんかすぐいっちゃいますよ。僕がやった一番高かったのは東京国際フォーラムというやつで1650億ですよ。お金をかけて作るわけですからそいつを有効に生かさないという手はないですし、国民に対して、納税者に対して失礼ですよね。考えていきますともっと観客のことを考えたホールのありかたということを考えなければならないと思っているわけです。みなさんはもうこういった仕事に就いていることは元々音楽が好きだったとか演劇が好きだったとかいう受皿があるかと思うんですが、そうですよね。

ただ、それが全人口、その町に住んでいる人がそうかというと全然そうじゃないと思うんですね。音楽ファンというのは人口の3%とかと言われるのでしょうか、その程度だと思うんですよ。ですから、僕は元々芝居好きなんですけれどもよく芝居を見ているんですけど、たいていどの劇団のを見に行っても似たような顔ぶれなんですよ。ああ、この人とは他の劇団の公演でも会ったなみたいな要は特定の仲間内だけで成立しているような業界でしかない気がするんですね。それだと本当に納税者のごく一部に対してサービスしていなければ、それ以外の人にとってはただただ税金を使わせていただいているだけになっている。ということは一人でも多くの人たちを劇場ワールドに引き込むということをやっていかなければならない。それが公共ホールの使命ではないかなと思っています。

それはホールが出来たから実現できるわけではないんでこれもいろいろな自治体が作っていますけれども文化振興プランとかというような長期構想、行政ですと大体、総合計画というものがあってかなり長期的なスパンでものごとを考えておりますけれどもそういう中で文化行政に特化したようなプランというものを考えていき、それに準じてだんだん積み上げていくという必要が有るんじゃないかなと思っています。ですから黒部でも十年計画ぐらいなんですね。まず種まきからやりましょうということなんです。突然、花が咲いて実が生るなんてありえないですからまず種まきをして畑を耕してというような地道な活動をくり返していくことによってやっと何年かして美しい花が咲き実が生るということになるんだろうということで長期的なビジョンで作ることが大事だと考えているわけです。そうなってきますといわゆる観賞型の事業と呼ばれているようなものだけではとうてい無理じゃないかな。僕らが新しいホールの計画があって呼ばれますとりっぱなコンサートホールを作れば、例えば、中村絋子さんがきてくれますよねとか小沢征爾が指揮をしてくれますよねとか

 

 

 

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