そういう中に突然、文化会館を作ったわけです。当時の町長が音楽が好きだったんで普通の多目的ホールではなくてもうちょっと演目の目的意識を持ったホールを作りたいということでこれも有る意味では多目的ホールなんですけど、音楽を主体にしたホールを作ったというのがバッハホールです。田んぼの中のコンサートホールとかだいたいそういうキャッチフレーズだったかと思いますけれども、オープンした当初というのは広域から人を集めてきたし、それには裏があったようですけれども要は外国から来るオーケストラとか演奏家の人には仙台で絶対、公演をブッキングしないで下さいとお願いをしているんですよね。ですから東北地方でそのコンサートを聞きたければ仙台に住んでいようとバッハホールまで行かないとコンサートが聞けない状況をつくって日曜日の昼間に公演をやるような形をしてかなり広域的に人を集めたきた。でもそれも仙台にいいホールができたりしてくるとなかなかそうもいかなくなって、うわさによると館の職員の主な仕事というのは話題性が非常に高かったですから見学のご案内ということとそれから田んぼの中に作ってますので雑草が生えてしまうということで草むしりと案内というのが主な仕事といわれたりしてます。まあ、これは悪口なんでしょうが、言われていたわけですね。
その後すぐに作られたのは熊本ですよね。熊本は館の名称も熊本県立劇場という名前なんですよね。それまではどちらかというと文化庁から補助金をもらうために文化というのがかかせないから文化会館とか文化センターという名称だったんですが、熊本の場合には文化会館や文化センターではないぞ、ちゃんとした舞台芸術のための施設だという想いをこめて熊本県立劇場と言う名前を付けたわけです。
それぐらい思い入れがあってかつNHKから鈴木健二さんという有名人を館長にもってきたりということがあったわけですけど、そのようなことでそれまでの多目的ホールであった文化会館からもうちょっと専門的的な舞台芸術に特化したホールが作られていったというのが状況かと思います。で、そうやって専用ホールを作っていっても利用率が上がらないんですね。これもうわさなのでよくわからないんですが、熊本県立劇場は大ホールがコンサートホール、中ホールが演劇劇場ですよね。大ホールというのが音楽専用、つまりクラシック音楽専用ですから非常に残響時間が長い、ホール自体が楽器のように響きわたるんですよね。ところが実際に使いたいという人はクラシック音楽だけではなくて講演会もやりたいでしょうし演歌なんかもやるわけですよね。
なのに音楽ホールと言われているのになんでこんなに音響が悪いのとか言われたりするわけです。それは電気音響と生音の違いがわかっていない人はそういうことになったりするのでしょうけれどもここは音が響きすぎて非常に使いにくいという意見がかなり出たそうです。ですから、せっかく専用のコンサートホールとして豊かな残響にしていたのをむしろ吸音材を増やしてあまり響かなくしよういう風な話が起こったりもしておりました。そうしないと利用率が上がらないわけですよね。ですから熊本なんかは市のホールがあったりとか他のホールで代替えが効きますけれども地方の都市で他のホールとネットワークが組めない様なところではあまり専用化をしちゃいますとどうしても専用ホールというのは目指した演目以外は多目的ホール以上に使いにくいことになりますからそこで生まれたのが主目的ホールだと思います。
これもことばあそび的なものもありまして、多目的ホールというと時代を逆行するようで評判悪いから、でも専用ホールではない。で、どうしようかということで考え出した言葉に近いのですけど主目的ホールと言うやつですね。ですから、メインになるものをまず決めてそれ以外のものについてもかなりのレベルで対応しようという考え方ですね。そうそう都合良く行かないんで実は我々もそういうホールをたくさん作ってきました。大ホールだったらクラシック音楽を主体にしながら他の演目にも使えるようにしようということで走行式の音響反射板をいれたり走行式にすれば当然反射板がじゃまでライトバトンや道具バトンが削られるとかありませんからフルスペックの吊り物機構が入れられるので両立できるのではないかと説得して作らせていただいたのですが実際できあがって音を聞くとやっぱり響きすぎてしまう。建築音響の専門家の方は1.5秒ぐらいだったら今のPAシステムを使えばたぶん明瞭度の高い音が出せますよと言うんですが、ちょっとうそじゃないかと思います。ですからクラシック音楽をやっているときはいいんですけれどもそれ以外はなに言っているかわからないというような状況が非常に多くなっているように思います。