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ですから、楽屋の数もフルオーケストラプラスコーラスだろうしオペラだったらそれにソリストがはいったり、コーラスが入ったりということ、つまり昔の多目的ホールの作り方が色んな演目の最小公倍数的なところで物を決めていったのに対してびわ湖ホールは最大公約数でものを作ろうと考えたわけですよ。使わない部屋というのはたくさん出てきますよね。そこでオペラをやるときにはすべての楽屋が埋まるかも知れませんが小編成のオーケストラでしたら空いている部屋がたくさんできてしまう。それはもういいと、しょうがないと両方をちゃんとやるとするとそうせざるを得ないということで作ったものなんですね。ですから、これは究極の多目的ホールだと思っているのですけど、多目的ホールが一概に悪い、だめだと言わないで、もし本気に多目的、全ての演目に対してその要求を満たそうとすればそれだけのことをやればできるわけですよね。

それと歴史的に考えれば、多目的ホールが果たしてきた役割というものがあるのではないかと思われる。各地域でホールが出来たことによって新しい文化の芽が芽生えてきた、それはレベルから見ればとるに足らない物かも知れないが、もしそれがなければ起きなかったような文化的運動が、やはり色々な所で芽生えてきたのではないかと思われる。だから多目的ホールを悪者扱いするのではなくやはり評価をしてあげたいと思う。しかし、助言する側からいえば例えば劇団のひとに「ここはコンサートをするには最高なホールです」といってもなんの価値もないわけです。自分たちがやる演目に対して使いにくいか、使いやすいかだけが問題ですからそういった意味では専用ホールに勝る物はないわけで、だんだん各地にホールが出来てきて、どれくらいあるのでしようか…公文協の名簿をみれば3000ぐらいですか、それぐらいの数になってくると、例えば高松なら県の施設もあれば市の施設もあるわけですから機能分担していこうということができるようになってきたのです。機能分担していけば多目的ということですべての演目に対応するということではなく、もう少し得意分野を決めていくということが可能になってきたのではないかと思います。

私は、文化庁に十数年籍があり、国立劇場の準備室にいたわけですが、完成したのはつい最近ですが、委員会などで専門家の意見を聞いたりしていたのはもう十数年前なんですね。当時のオペラの演出家もいれば照明家など色々な上演サイドのひと達が集まり、日本にオペラハウスを作るにはどうすればいいかという議論をずっとやってきたわけです。そのなかで例えばオペラの歌手は空調を嫌う人が多いので窓は開けられるようにするとかなどかなり細かいところまで四、五年かけて全部意見を聞いて、我々建築家が図面を起こすといった作業をずっとやってきたわけです。そういうことがやっと劇場技術、又は舞台関係の人がいうことばを建築家がわかるようになってきた時代だと思うんですね。

みなさんの世界も要はスラングと言うのでしょうか、専門用語がやたら多いですよね。それがわからないやつはだめみたいな評価がありませんか。寸法だっていまだに尺貫法ですよね。ここの舞台の間口はいくつだと言われて20mですと建築家が言ったりするとおまえはなにも知らないとかと思ったり、言ったりすることありませんか。間口が10間とか11間とかと言わないと相手にしてあげない。同様に建築の世界もそうなんですけどね。やたらと業界の中の人間にしかわからない言葉を使うのは好きな人種だと思うんですよ。両方ともそうですから、間で会話が成り立っていなかったというのが現状ですね。そういう中でもうちょっと歩み寄りをしなければいい物は出来ない。それは当然そうだと思いますよね。そういうことが実現できたのは新国立劇場の計画があって劇場技術者達が主にドイツの劇場に行って学んできたことを日本に持ち込んできたわけです。なぜドイツかというとドイツは戦争で負けましたから劇場はほとんどつぶされたわけですよね。

戦後、劇場が一番多く建てられたのはドイツなんですね。新しい劇場を作るときにどうしなければならないかということをドイツの人たちが色々考えてきたので劇場の技術が進んできたと、それを日本人が学んできて日本の文化会館、多目的ホールに持ち込んできて少しずつ良くなってきたと言うのが僕は第二世代と呼んでいるのですけども、だと思います。ですから第二世代というのは芸術家の意見がやっと劇場の建築に反映されるようになってきた時代ではないかと思います。

そういう中で特定の演目を想定した専用ホールというものが出来たわけです。これもみなさんよくご存じのことと思いますけれども専用ホールというとすぐイメージされるのが音楽なんですよね。音楽ホールがなぜ、これだけ作られてきたかというとバッハホールの影響ではないでしょうか。バッハホールとうのはみなさんよくご存じだと思いますがいったことがない方がほとんどだと思いますが、まわりは田んぼばかりなんですよね。

 

 

 

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