このシステムが正確に出来ていれば委託管理でも、職員自体の自主管理でもどちらでもよいと私は思います。
私の勤務していた厚生年金関連ホールでは、舞台技術部門だけは年金の職員と委託業者からの派遣職員で管理しており、理想的だとは言いがたいですが、職員が中心で管理しているため、良いほうではなかったかと思います。それでも問題点がなかった訳ではありません。年金ホールの場合は、オープン時は一応ベテランといわれる技術者の派遣をお願いし、落ちついた後(2〜3年過ぎた後)に新人と入れ替えていました。そこから新人教育を始めることになるのですが、やっと一人前の技術を伴ったと思われるころになると会社を退出してしまう。やっと当ホールに慣れて技術を覚えてくれたと思う頃になると辞めて他社へ行ってしまう。これが自分の所の職員で有れば諦めも出来るが、委託派遣職員であるのには何度となくあるため、うんざりしてくる。よく「この世界の学校の先生だね」と笑っていましたが、此の制度は、これの繰り返しなんだと自分に言い聞かせてまいりました。技術を一定に継承することの難しさを、つくづく考えさせられました。
それから、最近は挨拶が巧くできないか、挨拶しない若者が多い。それと声を余り出さず顔の動かしだけですます人。大声を出せと言っているのではありません。相手に聞こえる音量でいいのです。最近の若者は何とか成らないでしょうか。舞台・音響・照明と部門が違うだけで、もう挨拶をしない。同じ舞台上で仕事をするのですから挨拶ぐらいしてほしいものです。
こんな事例がありました。仕込み始めてから2時間30分位経ったあとに音響の来館業者がホール事務所にきまして、ホールの音響係の人はどなたですか? 何処におりますか? と尋ねてきました。舞台技術係は舞台に居るはずだが、「まだ会っていないのか?」と聞くと、すみません、探して見ます。ホールの音響係の方は業者がわからず舞台操作盤の近くでうろうろしていた。そのため、お互いに名乗りや挨拶はしていなかった。これも挨拶が先ではないでしょうか。
話が前後したがある時、委託業者の新人が音響希望で入ってきましたが、ホールの機材倉庫・舞台の常識・舞台用語等を覚えてもらうために教育係としてベテランの音響担当をつけ、勤務中は必ず行動を共にし覚えるようにマンツーマンで行っていました。
2〜3日経った頃、その新人が「自分にマイクオペレーションをやらせてほしい。」といってきたのです。「自分は学校で勉強してきたから出来るから」と言って聞き入れない。教育係の担当者は、余りしつこいので困って私の所に報告と相談にきましたので、私が代わって説明するため音響室へ出掛けて行きました。私に会うなり委託の新人は「舞台は初めてだが、オペレーションは学校で充分やって来たから出来ます。だから是非やらせてほしい」といってきました。それならばと考え、ホール音響係に当ホールのマイクを全て出して並べさせて、「この中のマイクで本日の公演の仕込み図を書いて並べてみろ。」と言った所、「それはわからないので先輩がやってください。俺はオペレーションのみです。だから舞台回りは先輩がやってください。」と言ったのです。
呆れてものが言えません。腹が立ちましたがそこはぐっと我慢して、「私としてはやらせてあげたいが、舞台と言うところは、新人だからと言って失敗が許されない所であり、言い訳が出来ない所だ。」従ってここのホール音響の残響・音質・その他舞台機構・照明等の事を何も分かってない人にやらせる訳にはいかないと、断りました。
何で、舞台での研修期間が必要なのか、本人には何も分かっていなかったのです。この様な考え方では指導できないと、早速次の日に委託業者を変えてもらいました。
学校は基礎を教える所であり、社会(舞台を含めて)は応用をする所であると私は思います。自分を売り込むのもよいのですが、自分を過信しすぎるのも困ります。技術力を見抜くことの難しさがよく分かりました。
先程は委託業者の派遣職員の方の話をしましたが、入社したての会館職員がホール部門に配置されたときは、必ず舞台係として1ヶ月から3ヶ月位舞台の事を見聞きしながら、勉強をさせました。但し女子職員は別ですが、勉強後受付業務係(ホール部門)として配置しておりました。自分の仕事の内容とは、ホールとはどんな所か、舞台とはどのようなものをやる所で自分はその中での仕事は何をやっているかを知ってほしかったからです。後で必ず勉強したことが身になってくれるものと信じております。