日本財団 図書館


例えばその時に、舞台の上で役者が真ん中から奥ヘダァーと去っていって、後ろ姿をピンで追っていって、最後にフアッと振り返った瞬間に、パッとアウトする、消すという、このきっかけの微妙な差で、それはあうんの呼吸みたいなものです。うまくいったら絶妙な間で締まりますし、お客さんもそのことでオッと思うし、役者さんもすごく気持ちが良いし、更に照明さんもやったという感じになりとても良いものが生まれます。

このように、それが舞台の生き物の部分をより良いものにするか、すごい魅力的なものにするかは、ホールスタッフの一人ずつがその舞台を面白くしようとどのくらい思っているかで変わっていくんだと思います。

次に、舞台の暗転の例です。非常灯や非常口の明かりを消すことが出来るホールもありますが、出来ないところでは黒いプラカードを作ってスタッフが非常灯を隠すということをします。これは本当に完全暗転が欲しいからするのです。いろんな明かりが漏れてしまいますと舞台の上でワァッと明かりがついた時に、オォッという感動が薄らぐのです。ところが、そのホールの管理の方が暗転の真っ最中にドアを明けて確認のために入って来て、ドアからの明かりが漏れてしまったということがありました。

そのほかに、緞帳を下ろす時刻が絶対に9時半までと定められているホールの側や、火薬の使用の際の繁雑な手続きの例もあります。

もう一つは、よく言われていることですが入館時刻や退館時刻の問題です。この問題は非常に大きいと思います。旅公演の場合には仕込みの時間もすごく急ぐわけですからトラックをつけて待っていても9時前は絶対駄目だと言われた例を聞いたことがあります。また、退館時刻についてももう少し臨機応変にできないかと思います。

今までは、トラブルの話ばかりしましたが逆の例もあります。乗り打ちの舞台スタッフは非常にハードなスケジュールですから疲れているのですが、そういう時にちょっとした心遣いが本当に嬉しいものです。仕込み図一つでもそうですし、実際に仕込みをする時に「じゃあ、ここからこうやってこうしたら良いですよ。」とか「うちの機材はこういう癖があるので、こうやった方が良いですよ。」とか、仕込みの時の搬入通路など図面だけではわからないことなど知らせてくれたり、楽屋の時間が終わっていてもバラシの後で汗ビッショリのスタッフが着替えする時に「ちよっとこの空間で着替えてください。」と言われただけでもうれしいわけです。

これは、私が聞いた中で一番うれしい話だったのですが、撤去の時にトラックを駐車場のところに付けますが、駐車場に明かりがなく真っ暗のことがあります。そうすると、荷物をトラックに積みこむのに良く見えないので懐中電灯を持つと手が1本使えなくなります。そういう時にホールの方が自分のところの機材で照明のスタンドを持ってきてくれて、電源も引いてくれ荷台を照らしてくれたそうです。

やはり舞台を作るということについてはホールのスタッフの人たち、委託の職員やボランティアの人などが舞台をもっとより良くしようという思いを持っていただくことで、大分違ってくると思います。

 

○内倉

恵庭から来ました内倉です。

私がこういった芝居、人形劇、読み聞かせ等に興味を持ちだしたのは1988年。恵庭に来てから丁度10年になります。「おはなしさんた恵夢」もまた同じく10周年を迎えます。私はずぶの素人ですが、親が子どもたちに本を読んであげて、芝居というものをそばで見ることによって感覚的にわかってもらいたい。私は北海道で生まれ、芝居というものは全く知らないで育ちました。高校まで生の芝居、ミュージカルを見たということは無いのです。

そして、初めてミュージカルにふれたのも生ではなく、映画が初めてでした。その後初めて劇団四季のミュージカルのウエストサイド物語を見ました。一番最初に受けた衝撃というのはすごく大きくて、こういったものに本当にに憧れました。今、子ども達を育てる上で親が出来ることをしよう、自分たちの文化を作り上げていこうというのが始まりだったわけです。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION