また、ホール全体のいろんなサービス面がありますが、そういうサービスのあり方ですとか、ホール経営と市民参加、市民の皆さん方の協力、支援などが大変に大切な時代になってきております。そういった面まで話が広がっていくかもしれませんが、そういった観点での研修会にさせていただきたいと思っております。
これからご紹介いたしますが、3人のコメンテーターの皆さんからのご提言とかご注文があると思いますが、それを中心にしてそこで提起された問題にどう対応したら良いのか。問題解決のネックというか壁といいますか、それは何なのか。きっと、制度の問題ですとか、予算の問題にぶちあたってくると思います。それから現場と経営管理者との問題も出てくると思います。いろんな壁を乗り越えるための手立て、工夫というものを皆さんと一緒に考える機会にさせていただきたいと思います。
○土井
芸術情報プラザの土井です。
今日の研修のテーマが「アーチストがホール技術スタッフに求めるもの」ということですので、一応立場上はアーチストになるのかなと考えたのですが、たまたま私の場合は舞台を作っているということで言いますと、東京で活動しているものですからいわゆる自治体ホールというものを使うというふうなことはあまりありません。民間の劇場が沢山あり、そういうところの活動が多いのですが、東京の舞台を作っている人達が全国公演をする時にいろいろな各自治体ホールを回ったりしたときの問題点などを聞きましたので、その辺りの例を出してお話をします。
その前にちょっと基本的な、全般的な話をしたいと思います。あまり技術とか業務管理とかの各論になってしまいますと話が堅くなりますので。舞台は生ものであり、舞台の幕が上がってから下りるまでは何が起きるか全然わかりません。その時、その時で対応しなくてはいけないのですが、私が経験した失敗談的な話をしてみたいと思います。
みんな人間ですから役者もいろいろ失敗をするのですね。あるミュージカルで主役の人が1回舞台に出ていて、それから退場しまして、しばらくしてもう1回出てくるというふうな舞台の進行になっていたのですが、全然でてこないのですね。それで何か事故があったのではないか、どうかしたのではないかとこちらも気をもむのですが、最初はちょっとした間なのでお客さんも気がつきませんでした。そのうち舞台の上の相手役の人がオロオロしたので段々客席もわかってきてザワザワし始めた頃に、やっと出てきたのですね。多分その間は3分ぐらいの出来事なのですが、それでも舞台の上はものすごく長く感じたと思います。これは役者の出とちりと言う例です。
また、これは音響の話なのですが、ある台詞のきっかけで、音響がポッと音を出しそこでダンスが始まる。ところが台詞を言っている役者がきっかけの台詞を言っても全然音が出ないのです。役者がもう1回きっかけの台詞を言ったのですね。でもやっぱり出ないのです。後で聞きましたら音響の人が家にテープを持ち帰って編集し直したのですが、肝心なところを全く忘れて置いてきてしまい、テープを回してから気がついたという単純なミスだったのです。こういうことを含めて本当にちょっとしたことで舞台の出来、不出来が変わってくることがあります。
次に、照明の場合にピンスポットというのがあります。全国公演を私たちは旅公演と呼んでいますが、旅公演に行く場合にオペレーターの方はその集団に一緒に付いてくることが多いのですが、例えばスポットの操作などは、「スポットの扱える人はいますか?」、「大丈夫です。」ということでホールの方にお願いするというケースが多いのです。その事前の打合わせというのがあまり出来ないというのも事実です。それでその当日にいざ打合わせをしてみたら、専門的なことは全然わからない人だったりします。そういう場合、現場では本当にハラハラしてしまいます。
本来、照明でピンスポットというのは大きい芝居の場合は非常に重要なものですから、熟練の人がやるのです。