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そのため姿も見にくく逃げ足も早い。こうしたことから、シカは犬に追われると谷に向かう習性を知っていないと猟にならない。

また三〇キロ程度の獲物なら、人の手に頼らず犬だけでも咬み倒してしまうことが多い。

ところでこうして猪や鹿を狩っていると、獲物を他人の罠に追い込んでしまうこともよくある。そのような場合は罠主に事情を伝えカブとタマス(何れも後述)を献上する。

また狩りの途中で犬が罠に掛かった時も罠主に頼んではずしてもらうのが礼儀とされてきた。このような仕来りが、対立する巻き狩りとワナ猟の利害の均衡を保ってきたのだ。

 

◎解体と配分◎

 

仕留められてイノシシやシカは、それぞれの手法に則りかずらで頭部・四足・胴体を括られ丈夫な天秤棒につるして運ばれる。まれには「三十貫(一二○キロ)」級のシシもいるのでさらに横棒を加えて四人で担ぐこともある。

巻き狩りの場合は、獲物を仕留めた猟師の家がカブ座と称し、解体から祝宴までの場所となる。このことは猟師にとって実に名誉な事であり、「カブば取った」と言って喜ぶ。

カブのニワに運ばれたシシは、四足を第一関節から切断され生木の串を刺して天秤棒につるされる。毛焼きが始まるのだ。枯れた竹をたいまつのように束ねて点火し、シシの体毛を入念に焼いていく。

 

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解体――先ず腹わたが出される

 

 

 

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