坂入……蝋人形のようですね。木彫でありながらこれだけの技術はすごいです。
木下……日本の見世物が具体的にどんなものを見せてきたのか、そのひとつひとつを知る必要があります。江戸時代にオランダ商館長ブロンホフが日本から持ち帰ったといわれているミイラの調査も進んでいます。鬼あり、河童あり、人魚あり、何ととぐろを巻いたロクロ首のミイラまでがあります。これらはヨーロッパ人の好奇心を満たすための重要な輸出品だった。もちろん全部贋物です。
山口……いかがわしさは文化の精髄ということですね。
木下……見世物の細部と全体像の両方を復元すること、見世物研究はまだ緒についたところです。
註1]……消え去ろうとしている見世物小屋を手がかりに、見世物性、仮設性の世界を総合的に記録し、研究することを目的に、1999年春設立に向けて準備中。日本仮設興行組合の西村太吉氏(理事)からの協力をえることができ、産学協同の精神で運営される学会は期待できそうである。学会の構想は、かつて故郡司正勝氏と山口昌男氏との間で検討していたもので、今回それが実現されることになる。