◎精神力の持続◎
五月から十月までの間、北海道を転々と生活する山川さんは、宿泊兼事務所用に作られたテントの中が一番落ち着くという。興行の季節が終わり、家で暮らすようになると、テントの隙間風が恋しくなり、寝付きが悪く寝られないともいう。小屋を組み始める重労働、ハレの祭りを迎える緊張感、祭りが終えると同時に撤収する迅速さ、作っては壊す、この仮設の連続性の中で逐次対応していく精神力は並大抵ではない。かなりの疲労を生む。だから、旭川から到着したばかりの団員たちの精神力は、疲労困憊で最低の状態だったにちがいない。仮設興行の世界は、かぎられた時間内にいかに精神力を持続できるかということではないだろうか。しかし山川さんは言う。「こういう商売は好きなものだけしかできません」と。本人たちにしか分からない楽しみがあるのだろう。
見世物の中では、オートバイサーカスは一軒のみであるが、最近では、本州にまで足を伸ばすと赤字になってしまい、道内を出ることはない。北海道の名物の一つになってしまったが、思わず怯む芸をいつまでも見せてもらいたい。〈眞島〉