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木製の円柱のオブジェが公園に突然出現。見事な造形である。さすが芸大彫刻科を中退した坂入さんの言葉だ。それは人間の幾何学的な造形物でモダンな感じさえするが、木造の自然色はなんともいい色であった。私はこのような経験を随分前に経験したことがある。それは巨石文化で有名なインドネシアのニアス島の伝統的な村を訪ねた時だった。村人は農作業に出かけ、村には人一人いない村に入り、立ち並ぶ民家に圧倒されたのである。ニッパ椰子で葺かれた舟形木造家屋、中庭に設けられた石造の椅子、周りは緑豊かな椰子に囲まれていて、人工色は一つとして存在しないのであった。自分の着ているシャツが周りから排除されていく力を感じとった。樽の場合そこまでは思わなかったにせよ、自然の材質の色に改めて感動した。歓楽街に隣接する公園には唐突であった。

翌日、樽の上に黄とブルーの二色のテントが張られ、観客が出入りするスロープ、正面の絵看板やドロ幕、スクイ、横幕などの飾り付けを行い完成する。

 

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完成間近の作業は、微調整しながら進む。

 

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箍を締める伊藤選手

 

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樽の中心に柱が立ちテントが張られる。

 

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ほぼ完成した樽

 

このオートバイサーカスはいつから日本で始まったのだろうか。樽型をしたサーカスは、多分日本だけじゃないか、戦前、お椀型の中を走ったと山川さんはいう。山川さんの前の代は富田米三さんといい、すでに故人になっている。幹子夫人に尋ねたところ、大正時代からオートバイサーカスはあったという。その頃は今の丸型テントではなく、伝統的な見世物小屋の長方形のテントで大荷だった、また、樽はなく、直立した塀を走ったという。どんな姿だったのか想像しがたい。

 

 

 

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