小屋が掛かる位置に線引きをし、その中心辺りから半径十五尺三寸(四六四センチ)の円を引き、円周を二十一等分する。そこに図のような折り畳み式の位を組み立て、少し湾曲した戸板をはめ込んでいくのである。縦十三尺(三九四センチ)横四四寸(一三三センチ)の戸板が数枚並べられていくと、それは西部劇に出てくる砦を思わせる壁である。ほぼ円形の形が整い、あと数枚という段階が一番苦労するようである。すべての戸板をはめ込むために円周を小さくしたり、また外に広げたり歪みを微調整する。地面に書かれた円周に沿い、自分の目だけを信用しながらの作業である。ほとんど長年の勘に頼らざるをえない。うまく二十一枚の戸板が嵌め込まれると、次は鋼鉄のロープを一周させジャキでぐいぐい締め付ける。二本の箍(たが)を締めるのである。鈍いギィギィというしなる音をさせながら樽の強度を調節するのである。そして最終の調整は、オートバイに乗る選手自らの手で行う。あまり締め付けるとオートバイが駆け回る時、弾力性を失い遠心力が減少する。また逆に緩めにしておくと、樽がオートバイの重さと遠心力の衝撃で分解してしまうのである。選手の命に関わる重大な仕事なのだ。