当地は熊取町の歴史を語る景観が色濃く残る地域である。是非ともこの景観を未来に伝えていきたい。現在のままではいずれ現代化は避けられないと思われる。今のあいだに地区住民と話し合いを進め、この地区の景観維持の方策について、検討を進めていくべきと考えられる。これは非常に難しい課題であるが、その方策について若干の提案を行う。
・まず、何より大切なことは、地域におけるまちづくりの気運の醸成である。この地域のまちづくりをどう進めていくかを考えていく場が必要である。
・次にその場の検討を通じて、まちづくり協定(将来像、景観保護育成の方針等)の締結に結び付けていく。
・それを受けて、町として「歴史的景観形成地区」指定としての条例(要綱)化の検討を行い、必要な施策の実施を図る。
・施策は今後検討されるべきであるが、大きく分けて景観及び住環境整備と個人の住宅に対する修理・修景補助が考えられる。
・少なくとも景観形成地区に対しては、新築・増改築に対しての景観誘導・指導のシステムを整備すべきであろうと考えられる。
(3) 広域連携計画
泉州地域は近年関西新空港の整備に伴い、地域が大幅に変貌しつつある。その中で、地域の歴史的資産を見直す動きも活発化し、各地で歴史的資産を活かした施設整備が進捗しつつある。既に泉州地域の歴史的資産を結ぶネットワークも情報誌を通じて行われている。旧中林綿布工場の保存活用が成し遂げられれば、その中核的な役割をはたすこととなるであろう。また、泉州地域は、大阪の近代工業、特に繊維産業の一大集積地であったことから、歴史的資産の活用においてもその関わりが大きい。田尻町の「愛らんどハウス」や和泉市の「久保惣記念美術館」もその関連施設である。しかしながら、工場と産業遺産を展示している施設は全く存在していない。その意味で、旧中林綿布工場の位置づけは極めて大きいと言える。
・旧中林綿布工場の保存活用を通じて、泉川地域の歴史文化継承施設のネットワーク化の強化を図る。
・貝塚市においては、「東洋の魔女」で有名な日紡貝塚が有名であるが、工場はすでになく、重要な織機の遺産(トヨタ式織機1号機)が大和高田市に寄託されている状況にある。これら泉州地域に残されている貴重な産業遺産の収集に努め、その受皿となる事が求められる。
(4) 段階計画・ソフト計画
ワークショップでは将来像もさることながら、今からすぐに使いこなしていくなかで考えていくべきと言う声が大きかった。提言のまとめにあたって今から何をなすべきかを含めた段階計画と、ソフトな活用の計画を提案して結びとする。
1] 段階計画
【第1段階】使いこなしていくなかでマスタープランを作る
ワークショップに結集した力をどの様に次のステップに結び付けていくかが最も重要なテーマである。
・ワークショップに参加したメンバーを中心として、引き続き「(仮称)赤煉瓦工場の保存と活用を進める会」のような市民団体の結成が望まれる。
・その会を中核としながら、様々な利用の企画を実践しつつ、マスタープランを作り上げていくことが大切である。
・行政はその活動支援とマスタープラン作りの必要な措置を取る。
・上記の民間団体が中心となって、見学会や各種イベントの実施を行っていく。
・そのための施設整備としては、現状の建物を安全に利用できる必要な措置、入口部分の説明板や広場の最小限の整備、各種イベントに対する助成措置などが必要である。