したがって、社会教育施設整備事業にとどまらず、農業関連事業や商業活性化事業その他様々な事業手法の検討が必要である。オープンスペースの整備については、防災も考えた公園整備事業が中核になると考えられるが、その他駐車場整備事業、河川整備事業等との連動も考慮すべきである。
3] 整備主体について
整備の主体は熊取町一括がもっとも望ましいと言えるが、博物館機能に府の「近代産業史博物館」を考えるなら当然大阪府との協力が必要となる。また、民間活力の導入も視野に入れておくべきと考えられる。出来るだけ多様な整備主体の可能性を検討しつつ進めることが大切である。それが、活き活きとした施設づくりにつながる事になると思われる。
(2) 周辺整備計画(歴史・文化ゾーン形成計画)
本計画の中で、周辺整備計画の持つ役割は極めて大きい。その点について次に述べる。
1] 中家住宅との連携(核施設整備ゾーン)
重要文化財中家住宅は保存整備がされており、現在建物の公開・イベントでの活用等で大きな役割を果たしている。旧中林綿布工場はその中家住宅と住吉川を挟んで隣接しており、両者が一体となった連携が重要である。中家住宅は江戸時代の旧庄屋を保存したものであり、旧中林綿布工場は近代産業遺産というように、時代を越えて連なる歴史的資産である。具体的には両者の間、住吉川を含むエリアを親水公園や広場として結び付けることが必要である。
2] JR熊取駅と当地を結ぶネットワーク整備
周辺地区調査で明らかになったように、JR熊取駅から当地にかけては、旧集落にあたり、伝統的な家屋と土塀等で歴史的雰囲気が感じられる地区となっている。その間は約800m〜1kmで、ゆっくり歩いて約20分というように散策には最適の距離である。幹線道路の交通量の多さに比して、集落内の道路は道幅が狭く、車の通行がほとんどないので散策道とするには最適である。ネットワーク整備を図るために次のことに留意したい。
・駅前に「(仮)熊取ビジターセンター」のようなインフォメーション施設を設けて、外来者に対する案内に供する。施設は難しくとも、少なくとも案内サイン(ルート図)の設置を図る。
・散策道は、既存の集落内の道をベースとしながら、住吉川の河川改惨と合わせて出来るところには河川緑道を設置し、ネットワーク化を図る。
・散策道の施設整備としては、舗装の工夫、サインの設置、代表的な民家等についての説明板の設置等を考える。舗装については、全面的なカラー舗装(石畳等)ではなくとも、サインの埋め込み表示だけでも、効果を上げることが出来る。
・今回の調査にとどまらず、皆で周辺の「よいとこ探し」を行って、見どころを探し、情報化していくことが大切である。
・駅と中林綿布工場の間に、重要文化財の降井家(ふるいけ)があり、ルートに組み入れる。現在居住されているので、常時公開は困難であるが、居住者と調整を図りながら、年に数回の公開を検討する。少なくとも、しっかりした説明板は設置すべきであろう。
・また、この地には、住居と一体となった形で木造ののこぎり屋根の工場が散在している。操業しているものもあるが、多くは倉庫や空家となっている。この空間を活かして、工房や、地域の小さな展示館などが出来ないであろうか。それが点となってつながれば、真の地域博物館(フィールドミュージアム)となっていくと考えられる。
3] 歴史的景観形成にむけて
駅から当地にかけてを「歴史的景観形成地区」として、面的に景観を保護・育成していくことも大切である。