また2つ目の水辺に関しては1]遊歩道の設置。これは水辺にガス灯などを設置し、夜でもレンガ塀を眺めることができるようにするというもの。2]繊維産業と水の関わりを忘れず、こだわりをもった整備をする。以上が提案された内容であるが、公園と水辺のデザインに共通して提案されたことは、そのデザインに地域住民が参加するということである。熊取には植木屋さんが多いことから公園設計のコンペを行い、投票は住民が行うとか、住民自らが自由な発想でデザインのアイデアを出すなど、参加の仕方はいろいろ考えられると思う。熊取町内のサインに関しても地元のアーティスト(存在すれば)や美大生などに書いてもらうなどして、熊取のオリジナル性をうちだすことは可能ではないか。また、公園や水辺の整備に関すること以外に事務所の活用方法と駐車場に関する提案もあった。事務所は公園と工場の中間に位置していることから、両方を眺められる絶好のポイントであるので、喫茶店やショップとして利用できるのではないか。それから駐車場は工場などの施設に隣接して整備しないで、もっと遠くへ設置し、そこから熊取町内を歩いて、これらの施設へたどり着けるようにすれば良いのではないかという意見があった。確かに車で熊取周辺地域を素通りされては、熊取を知るという点で大切な部分を置き去りにしているように思われる。サインを設置するなら、尚更のことである。是非、歩いてもらわなければ。
以上が工場外部・周辺地域に関する提案である。地域住民が利用するものなのだから、生活に密着し実用的なものでありつつも、地域の歴史性や文化を思い起こさせるような活用方法が望まれる。
3] まとめ
地域住民が皆で利用するものを、皆で考えるということは成功だけでなく失敗も大いにあり得るが、愛着という点は何ごとにも代えがたいものである。この旧中林綿布工場も、以前のように地場産業の中核であった面影をもちつつ、現在熊取に生活する住民にとっての愛着がわくものになれば、今後末永く大切に保存・活用されていくだろう。3班では、この施設をいかに管理・運営していくのか、とか資金面に関することなど実際的な問題も織りまぜながら、生活する者にとっての拠点と、熊取からの歴史・文化の発信拠点としての可能性を考えていくことができたと思う。
(4) 全体まとめ
1] ワークショップに参加して
この1年、旧中林綿布工場というノコギリ屋根をもつレンガ造の工場の保存活用、どんな新しい息吹をあたえ得るのかという課題を、多くの住民のみなさんと検討を重ねた。調査や討論、視察やフォーラムをひとつずつ積み重ねることによって見えてきたものは、決して絵空事ではなく地域の住民の方々の決意のようなものであった。それは地域の大切な宝(誇り)であって、みんなで使いたいという夢である。今回のワークショップのテーマである「皆でプランをつくる」で、各グループの意見が同じようなまとめにたどり着いたのは、みんなの夢が同じ方向に向かっていたからだと思う。
今年度のワークショップは一応の区切りであるので、参加者全員から一言ずつ感想をもらった。
・住民の方が何をしたいかという気持ちをもって、使い方も自分たちで決めていくことが大切。町の施設になっていることがメリットでもある。
・せっかくの施設を提供されたので誰もがきやすく使える施設になればよい。みんなの遊び場でもあり勉強の場でもある。
・住民のみんなが知恵を出し合い、皆がつくって、皆が使う。