日本財団 図書館


大規模なノコギリ屋根の工場がいくつもあり、多くの煉瓦倉庫群があり、それが港(内港)に面して繊維産業の盛んな時代がありありとよみがえる。当時は敷地内を列車が走っていたとも聞いた。そして工場内は豊かな緑があり、煉瓦と緑と港がすばらしいコントラストを描いた風景に感動をおぼえた記憶がある。その時に見せていただいたエネルギープラントが今のレストラン「御食国」となっている。当時は2階部分からしか入れず、入ってすぐ横には天井の高い空間がひろがっている。その時みんなで「ここはビアレストランになればいいなあ」と言ったのである。もちろんその時の夢が現実になるとは思ってもみなかった。

 

4] 洲本・保存活用の方針

さて、この煉瓦造建造物群の活用は、平成7年にまずミュージアム「アルファビア」ができる。これは民間の経営である。ついで8年にレストラン「御食国」、そして今年の9月に煉瓦造建築物の壁面を取り込んだ形で建設された「洲本市立図書館」が開館した。

煉瓦造建築物の活用としては5棟が保存活用されることになっており、あと2棟がそのままに残されている。多くの煉瓦造建築物群は取り壊されてしまったが、残して活用できるものはきっちりと整備され、保存されている。そのために多くの人が知恵を出し合い、努力をかさねられたのであろう。そして洲本市の方よりお話いただいたのは、工場内に残った樹木の緑のことである。建築物自体は使われなくなってから荒廃してしまったが、カネボウさんの企業の理念として敷地内の樹木は大切に育て、手入れを続けておられたこととのことである。海に近いこの地区ではなかなか樹木を育てるのはむつかしいということだ。敷地の計画にあたって、カネボウさんは樹木は切ってはいけないと言われたそうだ。そこでその理念の継承の意味でも、兵庫県の「緑豊かな地域環境の形成に関する条例」の認定にむけて取り組まれている。この条例の整備地区指定を受けると緑地等の規準がきびしくなり、多くの緑を確保できるという。煉瓦のまわりに緑があり、市民が集える広場があり、海があり、川があり、すばらしい洲本の顔となっていくものである。洲本市さんの資料の最後には「明治時代に誘致され、本市の礎を築いてきた煉瓦造の歴史的な財産として後世に継承し、その手法として兵庫県の緑条例における計画整備地区を取り入れようとする試みも始まったばかりです。行政はもちろんのこと、企業、地権者、住民がそれぞれの役割を果たしつつ、力を合わせて緑豊かでうるおいのある地域づくりを進めていこうと考えています。」とある。

 

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洲本市立図書館

 

5] 煉瓦の魅力

30分ほどの説明をうけて、図書館を見学させていただく。この日はちょうど休館日であったが、特別に見せてもらえた。アプローチの部分に煉瓦を取り入れ、ここが昔の煉瓦造の建造物だということを感じさせる。中に入るとゆったりとした閲覧室があり、一部の壁をそのままの煉瓦壁が利用されている。

 

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美術館・アルファビア

 

 

 

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