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また、今回の調査の結果、一番町通りや三番町通り、五番町通りにも伝統的表構えをもつ数軒の町家が連続していることが確認できた。そして正善町通りの久保家住宅や二番町下の芝田重三郎家住宅あるいは一昨年に大野市景観賞をうけた四番町の宇野・黒原家住宅をはじめとして、優れた意匠をもち、大野の町並みの形成に大きな役割を果たしている町家もあちこちに点在していることがわかった。さらに、表側は今風に改築・改修されているが、内部はほぼ昔ながらのままで、その気になれば以前の表構えに復元できる町家が数多くあったことは注目される点である。これらの町家をうまく再生することによって、より整った町並みが創り出されていくことは間違いない。

こうした町家とともに大野の町並み景観を創っているのは、旧城下の東端の寺町通りに沿って並んでいる寺院群である。この通りも七間通りとともにすでに大野を代表する町並みのひとつになっていて、訪れる観光客も多いところである。今回の調査ではこれら寺院建築と神社建築は調査対象から除外したが、本堂の大きな瓦屋根や通りに面してたつ重厚な表門あるいは板塀や石垣、墓碑や石碑あるいは境内の樹木などが大野独特の町並みや景観の形成に大きな役割を果たしていることは疑いないことである。

そしてもうひとつ、大野の町並みにとって忘れてはならないのが、明治以降になって新たに造られ、大野の近代化に大きく貢献した洋風あるいは近代建築である。これらは数は多くないが、大野の町並みにとって重要なアクセントになっている。三番通りの石灯籠小路角には明治末の岩治医院があり、青ペンキ塗の柱は石灯籠小路の景観に変化を与えている。また昨年大野市が取得し、観光の拠点として計画中の大野織物工業協同組合所有の洋館(元町、昭和12年建設)や大正期の建築で、特徴的な六角の望楼をもつ「入り船」旅館などは、水平性が強い大野の町並みに垂直性のアクセントを与え、また黄色や薄緑のペンキ塗の下見板張りは色彩面のアクセントをあたえている。

 

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