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6. 大野の土蔵

 

1) 土蔵の分布

現在調査地区内に残る土蔵の数は216棟(中野地区を除くと195棟)あり、第一次調査に上がった伝統的形式をもつ町家265棟と比較し、その数の多さに驚く。これは建物に占める蔵の割合が非常に高いことをしめしている。土蔵の分布は調査地区全体に散らばっているが、土蔵は旧武家屋敷地域の水落や泉にはみられず、町家地域やその周辺の中野に多く残っている。特に町家地域は蔵の密度が高く、東西南北の道路沿いには少なく、1番通りと2番通り、3番通りと4番通り、4番通りと5番通りの背割り排水路や横町の敷地奥に集中している。蔵の配置は町家の敷地割りと関係しており、一般的に道路側に建てられることは少なく、敷地奥に建てられている。このため、背割り排水路に沿って蔵が多く集中しているのである。

2) 土蔵の大きさと形態

土蔵の大きさは桁行3〜4間、梁行2〜3間が圧倒的に多く、全体の約60%を占めている。一番大きい蔵は桁行8間梁行5間で、元町にある大野織物工業協同組合所有の土蔵で、用途は倉庫である。階数は2階で、3階建や平家建は見られない。また、外観はほとんど切妻造り屋根で、瓦葺きとなり、一部に金属板葺きも見られる。所有者の話によれば、金属板葺きの蔵は以前鉄平石で葺いていたものもあったということである。外部壁面は、鉢巻部分を漆喰あるいは土壁、金属板等とし、腰部分を下見板、金属板等に仕上げている。鉢巻は漆喰塗りが圧倒的に多く、土壁塗り、金属板張りと続き、腰部も下見板張りが圧倒的に多く、続いて金属板張りが多い。中にはなまこ壁とする蔵も3例みられた。このうち鉢巻や腰部の金属板張りは土壁を保護するために、新たに張られたものとみられ、土壁の中に入いると思われが、その数は鉢巻漆喰塗り、腰部下見板張りの数には到底及ばない。

 

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