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討議/意見交換(各県専門委員)

 

サイパンやグアム、ニュージーランドも同じです。インドネシアのバリ島、スペイン、最近は中国でも京劇を楽しめるようにしています。このように民族の芸能や文化を通年で見ることができます。オフシーズンの問題がありますが、「ねぶた」でも「えんぶり」でもどれをとってもハワイのフラダンスよりダイナミックです。観光素材としてどのように位置づけ、年間を通して集客できるかを考えてみる必要があります。関西、九州地区からもっと集客することも考えてみる必要があるのではないでしょうか。

◇福田 観光県で同一経済圏の場合、足の引っ張り合いをするややこしい問題があります。東北についてはたいへん協調性があると感じました。私は門屋先生にお尋ねしたいことがあります。後継者の問題ですが、私はもう一歩進めていただきたい。例えば教育制度を見直すとか、そうでないと後継者問題のみならず、伝統芸能の価値観が見失われる恐れがあると思います。

◇藤井 PRがテーマになっていますが、テレビ番組は非常に有効だと思います。それからもう一つ、出張再現をやっている話がありましたが、私どもの世界でも出前というのがありまして、キャラバン隊を派遣する。そうすれば実演とセットになり、より具体的に表現できると思います。

◇門屋 先程、福田委員から学校制度における伝統芸能の位置づけに関する発言がありました。実は、岩手県で元教育長だった橋田さんという方が、退職した小中学校の校長先生と現職の指導主事を経験した方々とで7〜8人集まり、郷土芸能の懇話会を作って、アンケートをとりました。その結果、小学校では65%、中学校では45%が取り入れているということです。これをどのように教育行政にアピールするか。具体的に2つの教育事務所が研修会を催そうと計画しています。それから文部省でカリキュラムの再編成があり、平成12年度あたりに総合科目が入ってきます。そうすると、少なくても岩手県の大半の学校が地域に伝わる伝統芸能に取り組むと考えられます。

◇志田 伝統を守ることと、新しい視点を加えることの間には葛藤があります。実際に批判的な声も聞いています。私どもの最大の目的はお客様に喜んでいただくのが第一で、お客様に実際に体験していただいています。

◇門屋 私の持論ですが、民俗芸能は、実は伝統を守るという形では伝わらない。師匠から習ったものは7割程度しか伝わらない。2代たつと半分になってしまう。この失った部分をどうするか。その世代の人たちが工夫して、次に伝承していく。そうでなければジリ貧になってしまう。常に工夫という新しい武器を注入しなければいけないと思います。

◇小椋 自分の地域を知ってもらう手段は、来ていただくことが一番。例えば、自分が行ったことのある地域がテレビに映し出されると、パッと思い出される。私どもは最近モニター制度を始めました。アンケートで面白かったのは、来る前に「東北地方の印象は」という項目では、福島県が出てこないんです。今度は帰るときにアンケートをとると、東北はかなり上位で、もちろん福島もです。こういう方々には非常に宣伝効果があります。

◇三浦 栗駒では今年7月に第3セクターの複合施設「ハイルザーム」を作りました。その際、県の広報に頼んで、マスコミを十分活用しました。そのお陰で入館者が非常に増え、中でもテレビの宣伝力の強さを痛感しました。伝統芸能の保護・育成のお話では、町民から公募しまして青年を中心に神楽教室を開きました。素晴らしい神楽師が誕生、1年に1回発表会を開催しています。

◇志田 高齢者の人材活用と生き甲斐づくり。あとは観光に対して市民参加を促し、従来発信しきれなかった部分を打破する。これを体現したのが「なまはげ楽座」だということを、ご理解いただければと思います。

◇門屋 ここでまとめに入ります。まず、東北の伝統的な芸能や習俗、この素材をいかに、どのように汲み上げていくかが大きな課題です。ただ、汲み上げて使うだけではやがてジリ貧になるでしょう。ですから後継者問題等があるわけで、それは皆さん方に考えていただきたい。通年化は大変重要な課題です。毎日開くことは難しいかもしれません。例えば「鬼の館」のような公開施設があって常に見ることができる。このようなシステムを確立しなければならない。それから四季折々で見せていく方法もあると思います。あと体験型について、太鼓は比較的簡単ですが、民俗芸能を体験して身につけるのは難しいことです。しかし、教えるシステムがあれば何泊か宿泊していくでしょうし、いずれにせよ、試みていく必要はあると思います。それから冬にも夏の祭りを回るツアーのように東北6県を回れるようなものを作り、情報発信する必要があるとの意見がありました。東北6県の連携により実現できればなと思います。

 

 

 

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