海氷の内部応力は、海氷の収束があるとき、周囲の格子点までを含めて海氷速度を収束の大きさに比例させて減じるという佐藤(1987)の方法を用いている。
熱力学過程は、次の3つを考慮している。
(1) 大気と海氷の熱交換
(2) 海洋を通しての熱交換
(3) 降雪による海氷の体積増加
大気と海氷の熱交換過程では、Semtner(1976)の式を用いた。
Rs×(1-Al)+Ra+SH(Ti)+LH(Ti)―FL(Ti)+Ri)(Ti)=0 (4.2.4)
ここで、Rsは太陽放射、Alは海氷または積雪面のアルベド、Raは大気放射、SHは顕熱フラックス、LHは潜熱フラックス、Riは海氷表面からの長波長放射、Tiは海氷の表面温度である。なお、底面温度は常に結氷温度に等しいとしている。
海洋は、薄い表層とその下の混合層に分けられると考え、海氷と海洋の熱交換は表層のみで起こると仮定している。表層の厚さは全海域で1m、混合層は海域によって70〜200mの値を設定している。
海水温が海水の結氷温度(-1.8℃)未満のときは、海氷底面が成長し、融解温度(0.0℃)を超えるときは、海氷表面が融解するとしている。
降雪による海氷の体積増加は考慮しているが、降雨によって海氷表面が融ける効果は考慮していない。
オホーツク海では、海流の観測値はほとんどないため、海上保安庁(1983)などの統計的な値を、全期間を通して一定として与えている。この海流分布から地衡流バランスを仮定して海面の傾斜を算出し、海面傾度力を決定している。海流分布を図4.2.2に示す。
海洋の混合層の深さの分布を図4.2.3に示す。これは豊田・佐藤(1993)による海氷域の統計解析をもとに決定している。この混合層の深さは、海氷期間を通して一定としている。
海氷予測は6時間毎に1週間先まで行っている。
気象予想値はGPVデータを用いている。要素は風向・風速、気温、露点温度、地表面に達する短波および長波放射、降水量である。