4.2 海氷予測モデルの試用*
この節では、力学―熱力学モデルを用いた数値海氷予想モデル(岩尾,1998)を用いて、サハリン全域周辺の海氷予測を試行した結果と今後の課題を示す。
4.2.1 数値海氷予想モデルの概略
このモデルは、北海道からサハリンの南半分にかけての周辺の海氷を12.5kmメッシュで71×71の格子点での密接度、氷厚、および移動速度で表現する。ここで、海氷の密接度とは、ある海域を覆っている海氷の面積がその海域に占める割合で0から1の値をとる。予想対象領域と格子点の配置を図4.2.1に示す。
海氷の移動は力学過程を用い、海氷の生成・成長および融解に関しては熱力学過程を考慮している。
海氷の体積をMi、密接度をAiとすると、両変数の時間変化は、次のように表される。
ここで、Viは海氷の移動速度で、右辺第1項は移流による変化、第2項のPi,PAは海氷の生成・融解および降雪に関する量で、熱力学過程による変化である。DAは再分布関数と呼ばれ、氷盤が動く際に互いに重なり合って氷脈を形成することに関係している。詳しくは岩尾(1998)を参照されたい。
海氷の運動方程式は、風および海水の応力、コリオリの力、海面傾度力、海氷の内部応力が考慮されている。式で表すと、
τa+τW+C+G+Fi=0 (4.2.3)
ここで、τa:大気の応力、τWは海水の応力、Cはコリオリの力、Gは海面傾度力、Fiは海氷の内部応力である。
*中田琢志