はしがき
気象業務の目的の一つは、気象災害を防ぎ、社会活動を効率良く円滑に推進するため、ユーザーが必要な気象情報をタイムリーに提供することです。これには現在の気象状況を正確に把握し、これに基づいて将来の気象を精度良く予測することが大切になります。
気象予報の精度は、数値モデルの改善および解析、観測技術の進歩に伴って向上してまいりました。予測計算は現在の気象状態を初期値として物理方程式に基づいて積分していきます。従って、予測精度を上げるためには現在の状況を正確に把握することが重要です。
気象衛星「ひまわり」は短時間で広範囲の大気海洋の観測を可能にし、「衛星による気象観測」が大変有効であることを実証しました。衛星観測の研究開発はさらに進み、現在では資源探査、農業、漁業、地球科学等の多くの分野で「衛星によるリモートセンシング技術」が実用化されております。
海氷情報は航行する船舶、港湾および漁業の安全にとって、大変重要な情報であります。日本では、オホーツク海を含む周辺海域における海氷情報を作成するため、「ひまわり」「航空機」「地上レーダー」による海氷観測を行っております。欧米およびカナダでは数年前から海氷監視のために衛星観測を導入しており、この有効性が認識されております。
本事業では海氷の監視及び予測を目的として、衛星による海氷の計測技術および海氷シミュレーションモデルの調査研究を行います。また、諸外国の衛星観測の現状を調査して、オホーツク海における衛星による海氷監視を検討致します。これらの成果は船舶の安全航行、天気予報の精度向上および地球温暖化に代表される気候変動に関する貴重な情報を与えるものと考えられます。
この研究は日本財団の平成10年度補助事業により実施したものであります。研究開発を推進するにあたり、ご指導を頂きました委員の方々に厚く御礼申し上げます。
平成11年3月
財団法人 日本気象協会
会長 町田 直