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それは公共交通システムとの連携です。例えば東京都の交通局が、バスや地下鉄が、このカーシェアリング組織と一体になって、マイカーを持たなくて結構ですよと、車を使いたいとき、駅や自宅の近くにレンタカーがありますから、それを使ってくださいと。それがハイテクになれば、EVを使うわけですね。そんな仕組みのものが幾つか出てきております。

この代表的な例が、スイスのチューリッヒで稼働している、「ツーリ・モービル事業」です。これは、乗用車の全国的相乗り組織であるMobility社と、スイス第2位のレンタカー会社であるEuropcar社、更に、チューリッヒ公共輸送会社(VBZ社)の3社が連携して開始した事業です。Mobility社は全国400カ所のデポに750台の車両を所有しています。会員が1.7万人だそうです。この会員になっていれば、どこへ行っても予約して使えるという形ですね。チューリッヒの新事業では大体1平方キロメートル当たり1カ所デポを置いて、そこに2〜3台分の共同利用の車を置いておくということで、利用者は簡単に会員になれる形で、使用時間と使用距離に応じたお金を払う。そうすると1カ月ごとに、月払いでいくという形です。

同じような例が、ドイツのブレーメンにもあります。年会費を払うと、ブレーメンカルテという定期券が使えます。これがチューリッヒと同じような相乗りといいますか、車の共同利用です。具体的には、駅の近く、あるいは全体にデポをばらまいてありまして、定期券を買って会費を払うと車を使えます。だからマイカーを持たなくても済むという形のシステムです。これによって、いろいろな調査がありますけれども、1台で、大体マイカー5〜6台分に相当するということで、会員には、従来車を持っていた人、そのまま車を持ち続けている人、そして従来車を持っていなかった人などがいますが、全体として、走行台キロでは、大体半分になるという結果が出ております。ですからこの辺は、今まで車を持った人が手放すということもありますし、今まで持ってない人が、レンタカーを借りていた人が、このシステムを利用するということで、新しいモビリティの産業、新しい事業が出てきて、公共交通とマイカーというよりは、アワカーといいますか、共同の所有という形での、新しい仕組みが展開しつつあるというので、大変興味を持っております。

EV車の利用推進

最後に、EV車の利用推進という点に触れておきたいと思います。バーゼルには、電気自動車だけを使った宅配事業があります。また、ベルンでは、鉄道駅の高架下を利用して、バス乗りかえ施設その他と並んで、電気自動車のための充電装置がもうけてあるという形です。こんな形で、EVの利用が進んでいます。公共交通、地下鉄とこういうものとが一緒になって推進しているということで、こういった点も、やはり新しい仕組みがだんだんできつつあるのかなということです。

以上いろいろご紹介しましたが、公共交通と、新しい車なり自転車をうまく局地的に使う、あるいはEV車を使うという形での、新しい準公共交通システムとしてのソフトウェアができつつあるというのは、大変興味深い動きかと思います。結局地球環境問題で旅客交通ということになりますと、マイカーからいかに転換させるかということになりますと、いろいろな局面で工夫が必要だろうと思います。その中でこういった相乗り、あるいは共同利用という形を、もっと組織化するという点が、大変おもしろい動きかと思いまして、きょうお話し申し上げたということでございます。

 

 

 

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