日本財団 図書館


こういう改良を行なうことで、燃費と同時に、走行性能も改善されまして、先ほど来申しました、走りと燃費との両立の1つのアイテムということができます。

電気自動車も効率の高いモーターですとか、リチウムイオンバッテリーなどの開発によって、非常に環境のためにいい車が実現できるということであります。

こういう現有技術、エンジンあるいはトランスミッションの技術、それから電気自動車の技術をあわせまして、現在開発しておりますものは、パラレルとシリーズがさらにあいのこになったような、ハイブリッドシステムで、大体これで倍くらいの燃費が狙えそうです。エンジンの運転する範囲が特定されてきますので、排気についても非常にすぐれたものが実現できるということでございます。

これまでご紹介したものは、既に現有技術の組み合わせでございまして、技術的なめどは既に立っております。車も試作車としてはどんどん走っています。極端なことを言いますと、残っているのはコストの問題だけ、という状況でございます。

燃料電池の優秀性

それに対しまして燃料電池は、全く新しい技術概念がそこに入ってまいります。燃料電池の、何がいいかと申しますと、燃料電池そのものは、水しか排出しないということで、非常に低ミッションが実現できます。また、従来のエンジンに対して、非常にすぐれた効率を持っておりますので、CO2が低減できると同時に、省エネルギーも実現できる。将来地球環境の保全のためには、大変有効ではないかという期待を世界各国で集めている、こういうシステムでございます。

原理についてお話ししますが、今、車で使おうとほとんどのメーカーで考えているのは、固体高分子型燃料電池(PEM)というものでございます。これは、基本的に燃料は、水素と酸素、通常は空気を使いますけれども、この水素がイオンとなって、高分子膜の中を通っていく過程で発電します。この高分子膜を電解質と申しますけれども、これが固体のプラスチックでできているというのが非常に特徴的でございまして、液体でないことに加えて、温度が100度以下で非常に低いということで、取り扱いが楽だということと、しかも非常に出力密度が高いということで、大変に注目されてきたものでございます。

パワー密度という概念がありますが、これは単位あたりの大きさから、どれくらい出力が出るかというものです。1980年代の終わり時点では、とても乗用車に乗せるような代物ではありませんでしたが、カナダにありますバラドパリーシステムというメーカーが、1996年には1リットルの大きさで、1キロワットも出るような、非常にパワー密度の高いものをつくり上げていったことで、にわかに乗用車でも使うことができるんじゃないかと、現在各自動車メーカーが注目しているということでございます。

燃料電池の実用化の方向

ダイムラーベンツは、この水素を燃料として、かなりきびきびと走るような車を試作しております。ただ、NeCar-1、NeCar-2では、屋根の上に水素のボンベを積んでいるということで、インフラの面で非常に難しいため、1997年に、そのメタノールを水素に変える改質器を搭載したNeCar-3を発表しております。これが現在の、燃料電池車の主流のスタイルでございます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION