5分とか10分待てば、温度というのはぐっと下がりますから、トップテンに入ろうと思えば、10分冷やしてからにしようか、でもいいのですが我々のチームは優勝をねらってるんだと思うと、やっぱり45分で交換しないといけない、とにかく熱くても交換する。ですから何しろ優勝をねらっているということを、ちゃんとみんなにわかってもらおうということなんです。
(2) 役割意識の明確化
それと役割意識の明確化です。自分が車の下に潜って、一生懸命熱いのにねじを回してるときに、隣でたばこを吸ってる人がいると、やっぱり腹が立ちますよね。でも自分の仕事が終わったら、今度はその人が下に潜ってやるんだと、自分の仕事が終わるのを待ってるんだとわかっていれば、腹は立たないですよ。それぞれ50名いるメンバーが、どこの国から来て、何という名前で、何をしに来てるんだというのを、必ず走る前にみんなに、みんながいるところで明確に伝えるということなんです。ですから必ず全員集めて、各人の仕事は何か、我々のチームは優勝するんだ、この2つを胸にたたきこむわけです。外国で戦いをつづけてきて、何となくそれがわかるようになってきました。これは非常に大切なことだなと思いました。
(3) 不運を勝ちに結びつける
このラリーは、道がないようなところも結構走ります。分かれ道なんかがしょっちゅう出てくるんですね。特にロードブックには何も書いてない。そういう場合はドライバーとナビゲーターで、瞬間的にどっちへ行こうか決めるんですけれども、いつも正しいほうを選べるとは限らないんですね。
こういう場面が1日に何十回、何百回と出てくるんです。このラリーをやってると、運と不運は誰もが同じ数持ってるんだなというふうに思えるのです。もし不運にも悪路を選んでしまったときにそれをうまくカバーする、穴のほうを選んでしまっても、ブレーキを踏んでカバーするというのは実力なんだなというふうに、このラリーをやってると思います。その日ゴールして、夕食はみんな一緒にテントの中で食べるんですけど、大体言ってることの8割か9割は、きょうはついてた、ついてなかったという、話だけなんです。でも、運だけで勝負が決まるわけではありません。いかに運を生かし、不運を乗り切り勝ちに結びつけるかが重要なんです。
まだまだやるぞ
私も、1986年からずっと参加して、やっと97年、去年優勝できました。年齢的にも優勝したときが48歳でしたから、もうドライバーとしては完全に下り坂に入ってまして、これはもうだめなのかなというふうに思いかけていたぎりぎりのところで優勝できたんで、本当にほっとしました。12年もかかってしまいました。うれしいというよりも、肩の荷を降ろした感じなんですね。この11月20日で50歳になりましたが、まだまだ頑張るつもりです。パリ・ダカの成績も含めて世界のドライバーが覇権を競うワールドカップのシリーズで、50歳のワールドチャンピオンを目指して走りたいと思っています。
ご静聴ありがとうございました。