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このグラナダ・ダカールラリー、世界で一番過酷なラリーというふうに言われていますも何が過酷かといいますと、まず温度がすごく変化します。我々がスタートするのは真冬のヨーロッパですから気温はマイナスになります。その中をヒーターなしで走るので、かなり寒いんです。そこから地中海をフェリーで渡って、アフリカに行きます。ここ何年かはモロッコからアフリカに入っているんですが、過去にはアルジェリアから入ったこともあるし、リビアから入ったこともあるし、チュニジアから入ったこともあるし、その年ごとに場所は変わります。

気温の激変

アフリカ、イコール暑い、ジャングル、砂漠。ライオンがいるとか、象がいるとかというイメージがありますけれども、モロッコは標高3,000メートル級の山がたくさんあって、非常に寒いところなんです。冬ですからやっぱり雪があったりします。アフリカでもマイナス5度になるし、雪があるし、氷があるところもあるのです。そういった中を走って、だんだん南のほうに走って行きます。モーリタニアやマリという国になると、完全に砂漠の国です。日中は35度ぐらいになります。ふだん我々が町の中で乗っている車というのは、鉄板だけではなくて、遮音するためとか、遮熱するためとかで、いろいろなものが張ってあるわけです。ところが競争車というのはなるべく重量を軽くしなくちゃいけないものですから、鉄板だけなんです。ですからエンジンの熱、排気管の熱、ギアボックスの熱というのが、ほぼ直接室内に伝わってきます。走っているときの車の中の温度は、50度から55度ぐらいになってます。朝スタートして夕方まで、ずっとそういう温度の中にいるので、暑いし、のどが乾くし、かなり体力を使います。

夕方ゴールすると、それまで日中は外気温が35度ぐらいあったのが、夜、日が落ちると同時に気温がぐっと下がります。10度とか、寒いところは5度ぐらいまで下がることもあります。ですから1日で、気温の差が50度近くになることがあるんです。これはかなりきついですね。

脱水症状

我々は水を、1人5リッター持ってなくてはいけないというルールになってます。シートの後ろにポリタンクを積んでまして、そこからホースを引っ張って、いつでも飲めるようにしてるんですけれども、あまり飲むと、今度はトイレの問題が出てきます。朝、大体8時か9時にスタートして、夕方の4時とか5時にゴールしますので、ほぼ1日昼間走っているわけですから、どうしてもトイレに行きたくなることもあるんですが、やっぱり1回とまると、1分から2分ぐらいはロスしますね。そうなると20日間のうち、10回とまったとして、2分ロスすると、20分もロスすることになるんです。1秒差の争いをしているわけですからこれはもう完全に勝負がついちゃいます。だからといって、1日じゅう水を飲まないというわけにはいかないですね。30分か1時間走ったら、3回ぐらいピュッピュッと飲むとか、大体決めて飲んでます。砂漠ではもちろん汗は出ているんですけれども、空気が乾燥してますので、そんなにべたべたしないですね。いつもさらさらしているような感じなんで、汗が出たなという感じはあまりしないですね。それでだんだん脱水症状になっていってしまうというようなことがよくあります。今年、やはり砂漠を走るラリーで、5人も脱水症状で亡くなっています。ですから温度差というのは、軽く考えると危険で非常にきついなと思います。

 

 

 

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