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そういう努力を今まで怠ってきたから、成り行きでここまできたが、それは裏返せば別府の豊富な資源が我々を助けてくれただけで、21世紀の本当の意味の別府のあり方は、このような機会をもって、現状分析をし、目標を立てたあとで、それに近づける努力をすべきだと思う。

生意気なようだが、医療も含めた立場から今回のお話を聞いたが、皆さん、別府を素晴らしい所だとおっしゃった。温泉が豊富で保養地の条件としては誰もが認めると思う。21世紀の保養地は、いくつかの条件を満たさないと私は生き残れないと思う。

1つは先程からお話が出ているように、交通の便が良いこと。これは交通の不便な所には誰も行かないので、まず整備すべきだと思う。先程、理事もおっしゃっていたが、空港からアクセスが悪く、別府の中の温泉地間のアクセスが悪い。これは致命的なことだと思う。私は医者になったころ、アメリカに留学してマイアミにしばらくいたことがあるが、マイアミは大きなリゾートで、ダウンタウンをモノレールが通っている。その頃から車と人間、それから交通機関の大切さを考えていたわけだが、別府の現状を打開するような方策があるとすれば、バス、車以外にも新しい交通機関を考慮して、新しい都市デザインを考える。例えば八湯をすべてモノレールでつないだら、かなりのコストとリスクもあるのだろうが、それだけで大きなコミュニケーションがとれるのではないかと思う。

2番目の問題は、やはり温泉だ。先程から指摘されているように、温泉は豊富なのだが、内容がはっきりしない。どのような効能で、どのような効果があるのかも表示していないといけない。おっしゃる通りで、確かに温泉地の観光業者そのものが、はっきり言えばこの努力をしなかった。温泉にどのような効能があるのかといえば、学問的には、例えば炭酸泉、硫黄泉とか色々あるが、私の立場からいえば、そんなに難しく考えなくても、もっと温泉を身近な医療として、健康増進の方策として、もっとアピールすべきだと思う。やっと最近になって温泉が療養なり、健康増進に有効であるとお客さんの方がよく勉強されて来る。我々にはこのノウハウがまだないので、例えばバーデンバーデンでどういうことが行われているのか、興味があるところだ。

温泉に医学を持ち込むと非常にややこしくなるのだが、例えば長期滞在客にはメディカルチェックをした上で、この温泉に入りなさいとアドバイスをする。1日に3〜4回も入ったら高血圧の方などは倒れる場合もある。それを専門的にいえば湯あたりというのだが、このようなアドバイスをするには専門的な知識が必要なので、血圧の高い人には胸から上はお湯に入らず、15分以上お湯に入るなとか、高い温度のお湯に入るななどといったアドバイスは医療的にはできるので、このようなシステムさえ作って頂ければ、医療的なシステムは可能だと思う。

3番目の問題は気候が温暖なことだ。先程、先生の方から風土を利用しろというアドバイスがあった。専門的な用語で、温泉も含めた気候を利用した治療法を地形医学という。これには水浴、温泉と冷泉に入ること。それから大気浴。これには例えば森林浴などがある。自然の人気に触れて、健康増進を図る方法だ。最後は日光浴。これは当たり前のようだが、この3つの条件が揃った地形医療ができる所はなかなかない。

この3つの中で最も重要なのは温泉だと思うが、別府は温泉が多すぎて、逆にこのような地形医療ができることに気がついていないと思う。都市デザインそのものが、温泉自体を主眼にした、どちらかといえば室内の入浴を主眼にしているが、逆にバーデンバーデンは、お風呂に入ったあと、必ず飲泉、温泉を飲んで外を歩くようになっている。そのための散歩道、遊歩道が町の中に幾つも作られている。また、先程パス、カードのことが出ていたが、例えば100ドルなり200ドルなりを払ってパスを買うと、色々な施設を遊歩し、例えばマッサージを受けたら、次はカップを持って15分歩く。

 

 

 

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