山村教授(コーディネーター)
たいへん貴重なご意見を頂いた。最後ですが、別府八湯がそれぞれの個性を持ちながら発展していってほしいという願いを込めて、もう一度提言したい。「別府八湯」は、非常に素晴らしい名前だ。例えば浜脇温泉。ここにはエコハウス的な施設が出来上がっている。このような健康指向的な施設が出来たので、実際に会員券を買って定期的に利用する利用者が増えてきたとのことだ。従って浜脇温泉は健康指向の温泉場としてこの施設を活かしながら発展してはどうか。肝心の別府温泉は、海岸から山の手を含めて非常に広範囲なので、それぞれの旅館が周辺の環境に合わせて、個性を出した経営を進めればいいのだが、何よりも別府温泉の中心地域は、北浜を中心とし、別府の駅前通りを通じて、それぞれ商店街がある。このあたりが1つの問題ではないかと思う。
竹瓦温泉が整備され、それを何とか活用しようと、若い方々が動いている。これも素晴らしいが、竹瓦温泉を核にした1つの散策ルートを設定したらどうか。ただ歩きなさいというのではない。日本の観光地はパンフレットを配って、あとは「自由に任せる式」が多い。自由が好きという人もいるだろうが、その地域に来たら、その地域の事を知りたいと思う人がたくさんいる。そういう方々にきめ細かい地域ガイドをするということが欠けているのではないか。滞在の時間を増やすために新しい地域案内を各所で始める必要がある。また観光客に商店街にも通ってもらうことも重要だ。非常に残念なのは、ふなき銀座街辺りは、歯が抜けたように空き地になっていて、まさに空洞化そのものだ。秋の日曜日、一番お客さんが集まりそうな時期にも、ほとんど人が歩いていない。
亀川温泉は、竹瓦に負けないような浜田温泉の温泉施設がある。しかしこれも老朽化している。これをキチッと押さえて、海岸地域を含めた保養の場という性格づけをしてあげてはどうか。
鉄輪はこれ以上何もする必要はないと思う。あとは町並みの整備。出湯坂を中心とした古い町並み、湯治場的な町並みを活かすことが望まれる。ある旅館の改築工事現場に行ってきたが、やはり町並みに合わせた和風の建築様式だった。これは素晴らしいことだと思う。
柴石温泉は立派になった。ここはこのまま発展させる。
それから明礬温泉には湯の花小屋というのがあって、ユニークだ。草津温泉や玉川温泉とは違うユニークな湯の花小屋が観光客に受けているので、保養の場であるという性格付けをする。
観海寺温泉はレジャー付きの施設がたくさんあるのだから、ここはレジャー目的で多いに頑張って欲しい。
堀田温泉は、かつては旅館もあって、別府市で供給している源泉もあるが、どうもこの辺りは消えたようになっている。別府八湯と言いながら宿泊施設もない。共同浴場も伝統を踏まえた施設にすれば、周辺には一面に棚田という階段上の水田が広がっており、その上、瓦屋根は見事に黒っぽい色で統一されているので、グリーンに映えてたいへん綺麗だ。別府温泉郷の中にもこのような田園地帯があることをPRして、春先には菜の花を植えたり、秋にはコスモスを植えたりしていけば、集客できると思う。
地域の特性や歴史を活かして、別府八湯が連携して外に向かってアピールし、情報を発信していけば、別府温泉が衰退することはありえず、ますます発展していくと思う。施設にお金をかけなくてもいいと思う。これを皆さんの力で実現してもらいたい。