しかしながら、下呂温泉は、明治や江戸時代に温泉が飛騨川の洪水にいつも潰されて、全員で湯を汲んで浴槽まで運んでいた。このような苦労の中で新しい温泉も開発され、守られてきた。また乱掘が進んだ時に集中管理をし、資源を非常に有効に使って来たということがある。あるいは愛媛県の道後温泉も、この本館は非常に有名で、あの建物自体に非常に意味があるとして、重要文化財に指定されているが、この道後も絶えず地震があって、その度に温泉が止まって本当に困ったという。それで若者が神にすがって祈って、浜まで駆け足でいって、塩乞いをする。塩乞いとは、塩をかぶって戻ってきて、また祈る。これを何十日も続けたという記録もある。
別府は温泉が豊富で、それほど大事という認識はないかもしれない。自分の温泉だからどう使ってもいいとは当然考えていないと思うが、今こそ、もっと地域のために有効な温泉の利用方法を考えていく必要がある。第1セッションで、別府には非常に多くの泉質があると言っていたが、それでは食塩泉、塩化物泉の所はどこなのかを調査する必要がある。また、これはユニークなのでお客さんに開放していいというのなら、開放していい旅館のマップが出来る。これが出来れば、素通りでやってきた観光客も、パンフレットなどを見て入ってみようと思うだろう。1日に11もの温泉は廻れないから、せめて3ヵ所ぐらい廻って、違った温泉を体験してみようと思うだろう。これが非常に意味のあることなのだ。そうしたことをきめ細かに調査することから始めないとなかなか進まないだろう。別府の非常に豊富な温泉をもう一度洗いなおし、見直して、積極的に開放し、次のステップに進んでいくことが重要だ。すぐ近くにある黒川温泉は、地域がまとまり、結束することで、たいへんな観光客を集めて経済的にも非常に潤っている。それは20数件の全旅館が、小さな露天風呂を作っていつでも開放することにしたからだ。そして1200円払えば、3ヵ所の温泉に入れる。1カ所400円の計算で、そのうちの250円を提供した旅館に支払い、150円を組合が徴収する。これが成功したことで、短期間に数億円の予算が持てる組合に成長した。さらにこれが進んで、地域の観光保全にまでお金を投じていけるのであるから、非常に素晴らしい地域起こしだ。
皆の一致した協力体制でやってきたが、温泉が豊富で、それぞれ泉質も違うということに今まであまり気がつかなかった人達が、行動を起こして観光客のニーズに沿うようにした。何か良いものを見つけて、できるところから開発を図っていくことが大事だと思う。
では質問を受けます。
市民(病院院長)
スタンウェイさんに聞きたいことがある。先程のお話では、リューマチと美容関係の病院を温泉病院が民間で経営されているということだが、どのような形で成り立っているのか、国の保険の保護があるのかなど、もう少し詳しく教えてほしい。
Ross STANWAY氏(ニュージーランド)
ニュージーランドでは、健康保険制度が2つある。1つは国民健康保険、これは税金を納める人に与えられるもので、基本的には無料だ。もう1つは民間の病院の保健制度。これは政府のものとはまったく違う。ほとんどの患者は、民間病院の制度に入っている場合には、個人的に保険料金を払って加入している。何かあった場合、治療にあたり、医療費のほとんどが保障されている。民間の保険は、ただちに必要なものなのだが、先程イギリスのサイモンズさんも触れられていたように、治療を待っている人が多くて困っている。ウェイティングリストが長くて困るという問題も解決すべきことだと思う。