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山村教授(コーディネーター)

スタンウェイさんのロトルアは、その地域の住民が温泉を使ったり、それから温水を調理にも使っている方が多いと聞く。地元と観光業の業者との関係はどうなっているのか。

 

Ross STANWAY氏(ニュージーランド)

うまくマッチしていると思う。地域住民の働いている5人に1人は、この観光関連産業に従事している人だから、地域社会そのものが観光客は非常に大事だと思っている。これは経済的な側面のみならず、文化的な町づくりの側面からしても、我々の文化やユニークな特質を世界に見せる1つの手段にもなるので重要だ。国際的にみても大変な地名度があり、「もてなしの民族」であることを誇りに思っている。伝統的な地熱の総合的な利用方法は不可避であったかもしれない。しかし、伝統的な使い方を実利的な形で家庭単位で可能な所はやっているし、これも観光客を引きつける魅力になっている。ロトルアの観光収入は、年間で約3億5000万ニュージーランドドルで、ロトルア経済の非常に大きな大黒柱となっている。問題は、どれだけの観光客が来るのかということと、観光あるいは地域の価値観をどのように保持していくかのバランスだと思う。このバランスの維持は我々にとっての課題でもあるが、別府の方々にとってもそのバランスの保持は大事ではないかと思う。

 

山村教授(コーディネーター)

ロトルアの近郊だったと思うが、ワイマングという温泉の大きな池があり、大量の温泉が出ているが、これを流し放題にしていたことを思い出した。このような温泉から出る湯を具体的に利用しようという計画はあるか。

 

Ross STANWAY氏(ニュージーランド)

ワイマング地熱自然公園だと思うが、そこの魅力は、水の中にある数多くの色々な結晶塩をどうやって保護・保存することにあり、恐らく利用することは難しく、温泉地にはならないと思う。物理的な地熱エネルギーの表現形態としては非常にユニークなので、1つの事例として、それをそのまま見せることになるだろう。また、ワイマングは距離的にロトルアから車で30分程行ったところだ。ロトルアでも十分な温泉施設があるので、異なった形の魅力作りにしたいと考えている。

 

山村教授(コーディネーター)

今の話はアメリカのイエローストーンも同じで、あの世界的な大間欠泉をもっているイエローストーンの面積は四国の半分ほどある広大な地域だが、オールドフェイスの一部にいくつかの拠点だけを設けて、温泉を自然な形に残している。あるいは温泉だけでなく、木が倒れてもそのままにしておくというような自然保護の神髄のような地域だ。

以前、ここで山火事があったとき、これを自然に雨が降って消してくれるのを待つのか、あるいは消火するのかと議論したこともあった。

やっぱり自然保護をどのように考えていくか。すなわち、これから温泉で生きていく場合、温泉の資源を守りつつ、一方ではそれを観光や保養に使ったりという活用方法とのバランスが非常に大事だと思うわれる。

ミッチェルさん、グレンウッドの話だけでなく、アメリカの温泉利用の方法について何かあれば伺いたい。

 

 

 

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