江戸時代の温泉医、漢方医は温泉を神のごとく、君のごとく敬って使いなさいと記している。だから我々は、今こそ心と体を癒すために温泉を使うという原点に戻って考える必要があると思う。これは皆さんの話を伺ってまさにその通りだと思ったので、このミーティングが地域発展につながる手掛かりになればと思う。
まだ時間があるので、参加されているフロアの方からの質問はいかがだろうか。
篠藤氏(別府大学)
私はドイツに住んでいたことがある。先程、山村先生が言ったようにドイツは保険区制度に対する補助が圧倒的に多いので、ドイツの温泉地はかなり財政的に助かっていた。しかし法改正によって、今は厳しい立場にあると思うのだが、イギリスのサイモンズさんとイタリアのサビオンさんにイギリスとイタリアについて伺いたい。それからヤックムートさんには、バーデンバーデンではカジノと競馬の収益がかなりの部分でバーデンバーデンの温泉のインフラ整備に使われていると聞いているが、年間でどれくらい使われているのか、この2点を伺いたい。
Paul SIMONS氏(英国)
英国には、そのような社会保障の資金を使って温泉を助成するというシステムはない。ただ、EUの加盟国であるので、EUの法令の中でソーシャル・チャプターというのがある。それは、これから10年間にハーモナイゼーションを行おうというものだ。つまりEUの加盟国全体の中でハーモナイゼーションを行い、社会保障の中身や質的な面での調和や統合を図ろうというのだ。その辺は我々にとってメリットになると思う。いろいろな形で資金をできるだけ集めようと英国では努力している。
10年前、「温泉は代替医療である」と言われるようになった。しかし、どうもそれは疑わしいということで、「補完的医療」という名称に変わった。ここで驚いたことは、昨年、調査でわかったことで、いわゆるGP、医師のことだが、さまざまな医師のうち65%の医師が実際に患者にこのような補助医療、例えばハイドラセラピーやマッサージの処方を行っているという。そのために個人個人の医療費の何%かを補助的な医療で補おうとしているわけだ。実際には、病院では水道水を使っているのだが、そうでなく、温泉水を使うことによって効果を高めることができる。スタッフのトレーニングや教育も必要だし、温水を使ったウォーターセラピーを行うための教育も行う必要がある。
また英国においては、いわゆるメディカルカバーという任意な保険に加入している人が多い。このような民間の保険会社は、加入している個人の加入者が医療にかかわると、保険のコストが非常にかかる。だから保険会社と協力して温泉を予防医療扱いにすれば、実際に病院で治療した場合のコストより安く上がる。加入者にとっては温泉を使った方が予防になるし、保険会社にとっても負担が少なく、利益につながると保険会社を説得しようとしているところで、このように温泉の活用を民間の保険会社にもアプローチしているのだ。
Massimo SABBION氏(イタリア)
サイモンズさんが言ったことにまったく同感だ。すでにこういった諸問題に対していくつかの処置をとってきた。