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バースとアバノではこのように状況が違う。ただ温泉だけでは、人々のニーズや習慣が変わったために、対応しきれないというのが現状だ。人々はどんどん習慣を変えるので、少しでも新しい顧客を増やすために、何かしなければならない。この新しい顧客とは40〜50歳代を意味する。現在の私どもの平均顧客年齢は約65歳ぐらいなので、今後20年間という将来を見据えると、今40〜50代の人々にアピールをし新しい客層を開拓していかねばならない。このような人々には、完全なパッケージ、しかも温泉だけでなく、他の魅力も含めたパッケージを準備しなければならないと思う。内容はプロによるさまざまなセラピーはもちろん、レジャー要素も含むものも必要だ。レジャーには、やはり官民一体となった協力が必要になってくる。

2つ目に温泉について話をする場合、ヨーロッパでも日本でも同じだと思うのだが、自然を意味するのだ。だからあくまでも、温泉と温泉セラピーと自然のつながりを押し出そうとしている。よって環境に配慮している。例えば交通手段もモーターから電気動力に変えている。そして排気ガスを出さない自転車を多く利用している。また、今後3年間に200キロに及ぶ、自転車専用道を整備していこうと思っている。

もう1つ言いたいのは、この4日間で別府で交流してわかったことは、私どもが今年、100%成功したのが、国の医療システムの保護を受けるということだ。例えば市民がアバノに来た時、もちろん宿泊費は個人が負担するのだが、それ以外の治療費用のうち、基本的な治療、泥、浴場、マッサージ、医者による審問は国の医療システムでカバーできるようになっているのだ。この制度も今後保っていきたい。これも重要なことだが、このようなミーティングによって支援を得ることができると思う。ヨーロッパが主導し、世界的な規模で、温泉に関する協定を作っていたらどうかと思う。つまり温泉セラピーがレジャーだけに止まらず、健康に必要であると訴え、各国の政策の中で支援することが重要なのではないかと思う。

 

山村教授(コーディネーター)

まさに官民一体の推進が必要ということだった。私が実施した日本の温泉客3000人対象のアンケートでは、温泉地に求めるのは、第1に自然環境の素晴らしさだと言っている。環境が破壊されている、温泉情緒がない、なんとなく汚いという状況だと心も癒されないということだと思う。今後の健康指向について温泉をもっと活用して、活かしていくべきという意見は非常に大事だ。日本の厚生省でも、ある温泉治療については補助しようという動きが少しずつ出始めているので、このような意見をもっと広げて世界的な規模で話を進めていくべきだ。

今回の会議を契機として、温泉の新しい方向性が広がっていけば素晴らしいと思う。最後にリストマンさん、イスラエルにはかなり有力なホテルが進出し、それぞれが施設をもっているということだが、その開発の経緯とかそこでの問題点などはいかがか。

 

Ram LISTMAN氏(イスラエル)

死海のスパというコンセプトは比較的新しいもので、5年程度の歴史しかない。ハイアットリージェンシーは2年前に、グランドプラザホテルは1年前に開業し、ヒルトンは現在建設中だ。実際のところ死海の特徴を全ては捉えていないわけである。しかもまだ死海のごく一部分しか開発されていない。しかし死海は70キロ×50キロの非常に広い広範囲な塩水湖で、死海全体がスパであるわけだ。だから4、5ヵ所の鉱泉があるので、温泉を作っても差し支えないと思う。今では3000ほどホテルの客室があるが現在はこの客室数を2倍にする計画がある。対岸のヨルダンにおいてもスパ形式のホテルが将来的には開発されると思う。

 

 

 

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