山村教授(コーディネーター)
本日のテーマに「温泉文化と地域づくり」とある。伝統文化や工芸品を前面にだしていこうというお話もあった。それらをきめ細かに見るためには、長期に滞在してもらわなければならない。1泊では、その温泉地の良い所が十分に認識されないまま終わってしまう。バースを始めヨーロッパではたくさんの公園があり、素晴らしい環境も整備されている。その中で地域住民や観光業に係わっている方が、より良い環境を作るために、具体的にどのような活動をされ、どのような問題があるのか。サイモンズさんにお聞きしたい。
Paul SIMONS氏(英国)
バース市にとって重要なことは、コミュニティー全体が新しいスパ・プロジェクトに参画することだった。このスパを都市が所有するだけでなく、維持しなければならないが、大事なことは市民がスパ所有していることで、市民の意見を聞いて参画させる市民参画型でなければいけないということだった。そして入浴用の温水プールは、地元の人専用という規制もある。また、この地域の人達が使う場合、主要なスパの利益の一部から助成金が供与されるなど地元の人達が活発に使いやすいようになっている。単に観光客のためにスパを作ったのでなく、地元の人達に一番の利益還元、恩恵を共有させることが大事なのだ。外からできるだけ多くの人達に来て頂きたいが、大事なのはこの地域の経済を活性化し、雇用を促進するといったメリットを地元にもたらすことなのだ。そして、その効果を数字で実際に立証することが必要だ。観光業やサービス業に依存している都市、つまり他に主要な産業がなく、この観光業が唯一の商業活動という都市の場合、これからの世代の雇用創出の機会も非常に観光業に依存しているわけだから、新しい温泉のみならず、レストラン、ホテルを含めたサービス産業の経済的な利益がもたらされるように、地元の人達全員が参加し、観光業の教育訓練を受けるというシステムになっている。
山村教授(コーディネーター)
まさにその通りだと思う。市民参加型、そしてコミュニティー全体が計画の段階から参画して、何度も練ってより良いものに導いていくことが重要だ。本日の会議にも様々な分野の方々が来ている。そしてこのミーティングを発足したのも、民間の方々からだ。皆さん全体が意見を述べて、パネラーの意見を参考にしながら別府をより良い方向へ導くことができればたいへん素晴らしいと思う。
次にヤックムートさん、同じ視点でお話いただきたい。
Norbert JACKMUTH氏(ドイツ)
バーデンバーデンは、ドイツの中でも特殊な存在だ。90万泊もの宿泊が1年間になされている。うち7%のみが、療養を目的の宿泊だ。平均の宿泊数は3週間で、療養を兼ねたトリートメント、通院も含まれている。バーデンバーデンで楽しめる娯楽の主なものは、カジノ、競馬施設、おいしい食事とワイン、2500席もあるヨーロッパで最も大きいオペラハウスなどだ。ザルツブルグで開催されているような音楽の祭典もここで行われている。昔、バーデンバーデンは最も大きいロシアの植民地だった。2〜3週間前にロシアに行って政府と、チェルノブイリの方々にバーデンバーデンで何週間も滞在して頂けるという事業の契約を結んできた。私どもは将来、このような事業を展開していきたいと考えている。