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温泉客について調査をした結果を見ますと家族または友人同士がほとんどで、滞在目的は「保養」となっています。以前のような観光目的の団体客はいません。しかし、滞在日数は1泊が多く、温泉地における長期滞在は50〜60年前になくなったと言えます。1グループの人数は2〜3人で、自動車を利用して自由に移動するような旅行形態となっています。宿泊料金は1泊食付で1〜1.5万円(全体の6割)、1.5〜2万円が相場であり、この高い料金設定により長期滞在できなくなっています。しかし、食事なしのルームチャージ制度で対応できないのが日本の宿泊施設の現状です。食事付の料金制が戦後から続いています。

外国ではホテルは宿泊施設であり、食事は外へ出ますのでまちが賑やかですが、日本では食事も全てホテルの中となりますのでまちが廃れてしまいます。

温泉客の年代別統計では、温泉地に求めるものは第1位自然環境、第2位情緒、第3位泉質と各年代とも同じですが、宿泊施設や観光施設など魅力として挙げられておらず、温泉の効果も求められていませんと温泉の効用が考慮されなければヨーロッパのような長期滞在は考えられません。英国でも温泉には医学的な効用がないということから、温泉が廃れたと聞いています。また、郷土料理も魅力の一つとして挙げられていますが、観光施設は求められていません。20〜30代では「ストレス解消」が多くなっています。

今後行ってみたい温泉については、岐阜県の下呂温泉が毎年第1位として挙げられます。その理由は「自然、情緒、特性」となっています。別府は第3位で、その他白骨、乳頭、奥飛騨など小さい温泉地が上位に入っています。

温泉に期待する施設では、第1位露天風呂17.4%と高い希望が現われています。第2位には散歩道、共同浴場、プール、資料館など、第3位には低料金の宿泊施設が挙げられています。しかし、温泉病院についての希望は1.3%とほとんどなく、会議場・テーマパークも全く希望されていません。

長期滞在の療養施設づくりを進めるにしても、現状では不可能と思います。医師の協力が必要ですし、施設建設も難しく、温泉治療に対して医療保険も適用されません。前述の希望を満たし、温泉を「予防医学、癒し」の場とすることが重要です。本当の温泉が核となる温泉の在り方、もっと温泉を紹介することが大切です。

東北の秋田玉川温泉は民間療法で利用されていますが、国が本当に体によい温泉については支援することが必要と思います。しかし、業者だけでは不可能で、業者が散歩道を造っただけではだめなのです。今こそ、温泉行政の立て直しが重要となっています。

大学では温泉についての研究が進み、療養について論じられています。今後、美容・エステなど新しい利用方法を考え出す必要があります。参加している皆様とそれぞれのの温泉利用方法などについて話し合いの場が持てることは大変有効と思います。外国の実例のうち、取り入れられるものは取り入れ、地域の振興に役立てたいと思います。

(以下自由意見交換)

 

山村教授

医療的利用方法が今日の話題に上がっていますが、イタリアなどでは本当の医学的な協力があって行われているものです。ここでは、療法の可能性などについて話し合いたいと思います。

明日のシンポジウムでは海外参加者の方々の地域紹介、温泉医療について話し合いたいと思います。英国における医療としての温泉利用はいかがでしょうか。

 

 

 

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