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●実験時の天候と利用者数:初日の朝は好天に恵まれたが、同日夕方から雨となり、火曜日、水曜日は朝晩とも雨で、モニターの参加意欲を削ぐ結果となった。特に、木曜日の朝には霰が降る天候であり、Bルートでは同日、Aルートでは翌日の利用者が激減した。

●登録モニター数が期待値を大きく下回った理由:以下のように考えられる。

1]地方都市はマイカー志向が強い。

2]パーク・アンド・バスライドやTDM施策に対する認知度が高くなく、その効果等への期待度が低い。

3]実験の事前に提示されたバス運行内容のサービスレベルでは、通勤や業務および私事行動で制約を受ける。

4]Aルートにおいて、システムバス運行路線(国道113号)がマイカー通勤者の多くが利用している道路(新新バイパス)と異なっていた。

5]降雨や降雪の多い冬期の実験実施であるため、乗り換え抵抗が高まっていたと想定される。

6]民間事業所通勤者へのモニター参加要請は各企業の所管課を窓口として行ったが、多くの事業所ではマイカー通勤を認めていないという建前があるため、会社としてはモニター登録を推奨できない事情があり、結果として民間事業所従業員のモニター登録は極めて低調であった。

●運行所要時間:バス運行所要時間はマイカーの所要時間と同程度か、むしろ時間を要する結果となった。そのためシステムバス利用による所要時間の短縮メリットは得られなかった。

●平均旅行速度:Aルートで16〜25km/h程度、Bルートで13〜18km/h程度であった。

●利用者の評価:バスの運行時間帯や運行間隔、駐車場からバス停までの距離、バスの混雑具合、観光バスタイプ車両(Aルート)の乗り心地などについては満足度が高かったが、通勤時間については、普段より多くかかったため、不満とする人が8割を占めた。今後の本格実施時の利用意向は、「利用する」「料金が安くなったら利用する」が全体の1/3を占めているものの、「利用しない」とする人は約6割であった。

●交通量調査:実測交通量および管制データにより実験時の交通量を比較したが、実験の影響効果は認められなかった。また、渋滞長調査においても実験による影響効果は認められなかった。走行速度調査においては実験時の方が時間を要した。

●実験の評価:本実験では必ずしも十分な数のモニターが集まらなかったため、交通渋滞の緩和等では有意な結果が得られなかったが、本実験によるパーク・アンド・バスライドやTDM施策への一般市民へのPRによって、より多くの市民に周知されたと思われる。また、自動車交通量の削減、温室効果ガス排出削減の効果がみられ、実験参加モニターの意見抽出(アンケート調査)により、本格実施に向けての知見を得ることができた。

 

問題、課題

●参加モニターが少なかったことの対策として、募集に際して多様な手段を採用することが必要である。また、アンケート調査結果での要望を踏まえ、今後はバスルートの設定、バス停の配置、運行時間・運行間隔の設定等で、できるだけ多様なニーズに応えられるよう配慮することが必要である。

●実験成功のために、関連機関相互の連絡調整や市民に対する事前意識調査等が必要であり、事前に十分な準備期間を確保することが必要不可欠である。

●通勤者の交通手段選択に関する主要因は「所要時間」と「通勤費用」であるため、公共駐車場の活用や民間との連携等により駐車場料金の無料化、バス事業者に対する公的補助制度の創設等を検討する必要がある。

●路線バス等専用通行帯の主要箇所に警察官を配置したが(取り締まりはしていない)、左折車両は専用通行帯に流入せざるを得ず、また規制遵守に対する市民意識の低さ等から、結果的にシステムバスの所要時間はマイカーと比べて短縮されないという問題があった。そのため、既設のバス専用・優先レーンの活性化のために、ハード面での整備や関連するソフト施策の導入、地道な市民意識の啓発が必要である。

 

 

 

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