(3)トラック運送業界を取り巻く環境の変化
(2)で整理したように、海上輸送を利用していない荷主事業者、トラック運送事業者は、海上輸送の時間的サービス水準が、必要とするサービスに合致していないため、海上輸送を利用していないという状況にある。
さらに、本調査で実施した関係者ヒアリング結果を踏まえると、モーダルシフトの中心的存在となるトラック運送業界における構造変化が、事業者のモーダルシフトの取り組み意欲を抑えていると考えられ、特に、以下に示す2つの事項が大きな要因となっていると考えられる。
1]荷動きの低迷
モーダルシフトの議論は、ドライバー不足問題が深刻化していた頃に本格化した。しかしながら、その後の景気低迷の長期化を背景に輸送需要自体が減少し、現状ではドライバー不足問題は以前に比べて緩和されている。このため、トラック運送業界におけるモーダルシフト推進の意向が低くなっていると言える。
2]収受運賃水準の低迷
荷主事業者サイドでは、不況の深刻化、価格破壊等の流通変革の進行に対応して、物流コストの削減に対する意識が非常に強くなっている。一方、トラック運送業界では、業界構造自体が参入撤退が容易であることもあり、物流二法施行以来、過当競争、価格競争が激化している。これらの状況が相まって、トラック運送事業者が荷主事業者から収受する運賃水準は低迷している。
このため、トラック運送事業者は収益性確保のために、海運や鉄道を利用せずに陸送輸送を継続せざるを得ない状況にある(海上輸送、鉄道輸送を利用するためのコスト負担能力が実質的に低下している)。
また、このような収益性の低下が、シャーシ等の新たな設備投資を困難化させているという側面もある。